ロハス・メディカルvol.123(2015年12月号)

患者と医療従事者の自律をサポートする月刊情報誌『ロハス・メディカル』の2015年12月号です。


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東京大学教授担当している秋下雅弘・東京大学教授は説明します。転倒、認知機能低下ともに、要介護から寝たきりへとつながる危険因子。フレイルの原因であり、結果です。 単独では「危険性が高くない」と考えられている薬であっても、種類が重なるとリスクは上がってくるそうです。 同学会では、1人の患者が6種類以上服薬しているケースを「ポリファーマシー」と定義して、医療従事者に対して注意を促しています。 ありゃりゃ当てはまっちゃたよ、と心配になった方もいらっしゃることでしょう。それも当然のことで、70歳以上の通院患者は平均で6〜7種類の薬を処方されている、という調査報告があります。つまり、現在医療機関を受診している高齢者にとってポリファーマシーは、極めてありふれたことです。 なぜ、そんなに多くの薬を処方されるかと言えば、一つには高齢になると複数の部位に不調を抱えるようになるからで、それを複数の医療機関で診てもらうからです。 医療機関側が薬を売って儲けようとしているようなことは昔と違って考えにくく、それぞれの医師は適正な薬を出したつもりなのに、気づいたら積み上がっていたということなのです。 充実した国民皆保険によって、果たして薬を買えるだろうかという経済的心配をしないで済み、診断をつけたら薬を処方するというのが医師・患者の双方にとって当たり前になっていることと表裏一体でもあります。 世界的にも恵まれた健康保険制度の下、健康を保つために医療機関へ行ったのに、そ秋下雅弘れがかえってフレイルを招いているのだとしたら、皮肉な話です。そして、そのような多過ぎる薬の費用負担が、健康保険制度そのものを危うくもしています。11


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