ロハス・メディカルvol.123(2015年12月号)

患者と医療従事者の自律をサポートする月刊情報誌『ロハス・メディカル』の2015年12月号です。


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前補助金に化けた不足分そして強まる行政支配 その結果、大いに「偏り」が生じました。 診療する患者の数にほぼ比例する形での補填となったため、1人の患者に対して使う高額設備の多い医療機関、積極的に設備投資する医療機関ほど消費税分の払い過ぎになりました。つまり患者にとって心強い医療機関ほど経営が苦しくなったわけです。そして、診療報酬が全国一律であることと相まって、原価率が高く(看護師の人件費や物価、不動産取得にかかる費用が高いため)利益率は低くなりがちだった首都圏で、最も問題が深刻です。 一方、あまり積極的に設備投資しない医療機関は、上乗せで逆に儲かったという現象すら起きているようです。の際、図のような「補填」が行われました。本来の趣旨から言えば、医療行為すべての価格を約1・028倍(1・08÷1・05)しないといけないはずですが、そんな面倒なことはしていられない、と大雑把になりました。 対応を決めた中央社会医療保険協議会(中医協)の会長自身が、当時のメディアの取材に対して「合理的・公正に個別項目に付ける方法がなかったため、基本診療料にほぼ全額補填する裁定案を出した」「率直に言って、個別の医療機関が負担した消費税を、患者個人が支払う診療報酬で還元するのは不可能だ。中医協の外で話を付けてほしい」と述べたそうですから、正確になるはずがありません。項で、診療報酬による補填が「不充分で偏っていた」と記しました。 まず不充分の方ですが、実は増税前の税率5%の時代から、日本医師会が、率にして診療報酬総額の2・2%、金額にするなら年8000億円程度、医療機関の持ち出しになっていると主張していました。つまり、医療機関が仕入れの際に払う消費税の額と、診療報酬に上乗せされた額とに、それだけの差があったというのです。 2・2%の根拠は、かなり怪しいです。ただ、非課税扱いのため何千億円も払い過ぎになっているということで業界の認識が一致していたことは間違いありません。 そこに、2014年度改定 日本医師会の主たる会員である開業医はこちらのケースが多いためか、あるいは消費税の増税分から「医療介護サービスの提供体制の改革のための新たな財政支援制度」という総計904億円の基金が都道府県に設けられて医療機関へ配分されることになったためか、日本医師会が現状を問題視する気配はありません。 しかし、通称「横倉基金」と日本医師会会長の苗字を冠して呼ばれることも多い「医療介護サービスの提供体制の改革のための新たな財政支援制度」は、要するに補助金です。5年以上前の特集「指定病院そして補助金」(VOL・47、ロハス・メディカルのWEBサイトで電子書籍を読めます)でも指摘したように、20


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