ロハス・メディカルvol.124(2016年1月号)

患者と医療従事者の自律をサポートする月刊情報誌『ロハス・メディカル』の2016年1月号です。


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 舟久保氏が以前所属していた名古屋大学の佐藤純教授たちのグループは、気圧を変えられる特殊な部屋を使い、慢性的な関節痛の持病のある人に痛みを評価してもらう実験を行いました。 低気圧の接近時を想定して次第に気圧を下げていくと、被験者は日頃から天気が悪化する前に感じるのと同様の痛みを訴え出しました。グラフをよく見ると、低気圧下にあっても、気圧の変化がなく安定した状態では痛み度数がいったん下がり、そして元の気圧まで上昇させる過程で再び高い値を示しました(右図)。 佐藤教授や舟久保氏たちは慢性痛を持つラットでも同様の実験を行い、気圧を下げていったところ、痛みを感じた時にとる行動が観察されました。心拍血圧、血中のノルアドレナリン値などの交感神経の興奮を示す指標も増加していました。 「交感神経に電極を入れて測ったところ、働きが上がっていることも確認されました。人だったら当然このような実験はできないですし、心理的な原因で痛みが増すこともありますが、ラットで再現できたことで、気圧変化の影響が科学的に明らかになりました」と舟久保氏。 気圧の変化を感じ取るセンサーが、内耳にあることも動物実験から判明しました。内耳は元々体の傾きを脳に伝える平衡感覚を司る器官です。あらかじめ内耳を壊した慢性痛ラットで気圧を下げても痛み行動は見られなかったのです。 以上より気圧変化による気象病は、急激な気圧の変化により内耳の気圧センサーが刺激され、交感神経を興奮させてしまうことが原因と考えられるようになりました。 一方、温度変化による天気痛の発症も、ラッ真犯人を突き止めた実験ドイツの気象病予報サイト(一例)LOHASMEDICALVIEWいますし、お肌の乾燥予報や紫外線予報などもその例です」と舟久保氏。そうしたインターネットサイトも増えつつあり、本格的に普及する日も遠くないかもしれません。9


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