ロハス・メディカルvol.124(2016年1月号)

患者と医療従事者の自律をサポートする月刊情報誌『ロハス・メディカル』の2016年1月号です。


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おおにし・むつこ●医学博士。東京女子医科大学卒業。国立がんセンター、東京大学を経て2007年4月からボストンにて基礎研究に従事。LOHASMEDICALVIEW それらの肉を、塩せき※、発酵、燻製などの加工によって、風味を高めたり保存性を上げたりした肉が加工肉です。例えば、ハム、ソーセージ、ベーコン、コーンビーフ、缶詰肉、肉ベースのソースです。 さて、IARCは加工肉をは、加工肉を多く摂取する食生活が要因のがん死亡者が全世界で年間3万4千人いると言います。一方でタバコによるがんのために死亡する人は全世界で年間約150万人、アルコールは40万人、大気汚染は47万人です。つまり、加工肉の摂取によるがんのリスクは、タバコに比べるとかなり低いのです。 加工肉や赤身肉に発がん性がある詳しいメカニズムは未解明ですが、可能性はいくつか示唆されています。 例えば、多くの加工肉は、微生物の繁殖を抑えるため亜硝酸塩を保存剤として添加しています。この亜硝酸塩は、IARCの分類でグループ2Aです。そして、調理などで高熱を加えると発がん性物質として知られるニトロソアミンなどN︱ニトロソ化合物になります。調理段階でニトロソアミンが形成されなくても、タバコと同じ「グループ1」に分類しましたが、加工肉に発がん性のあることは科学的に確実というだけのことで、タバコと同程度のリスクがあることは意味しません。 リスクの程度としては、毎日50Gの加工肉を食べると、大腸がんのリスクが18%増すという結論でした。50Gは厚切りベーコン約2枚、大きなホットドッグなら1本です。 「世界の疾病による負担プロジェクト」の最新の報告で月にWHO傘下のがん専門組織である国際がん研究機関(IARC)が「加工肉や赤身肉が、がんの原因となる」と発表したことは、世界中で大きなニュースになりましたね。 フランス・リヨンに世界10カ国から22人の科学者が集まり、約800の研究論文から、赤身肉や加工肉の発がん性を総合的に評価したところ、加工肉は「グループ1(発がん性がある)」と判定されたというものです。同じグループ1にはタバコやアルコール、紫外線、アスベストなどが分類されています。また、赤身肉は「グループ2A(恐らく発がん性がある)」と判定されました。 加工肉、赤身肉と言われてもピンと来ないと思います。 まず、加工されていない(ミンチや冷凍は加工と見なしません)哺乳類、主に牛、豚、羊、馬、ヤギの筋肉のことを、赤身肉と呼びます。10第40回加工肉で発がん発表の意味内科医(ボストン在住)大西睦子発がん性の原因グループの意味※抗菌効果を得る他、保水性や結着性、風味、見栄えなどを改善するため、塩漬けして発色剤を添加する工程。発色剤を使わずに作ったハムやウインナーは「無塩せき」と表示される。10


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