ロハス・メディカルvol.125(2016年2月号)

患者と医療従事者の自律をサポートする月刊情報誌『ロハス・メディカル』の2016年2月号です。


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 同じ医療行為の値段は全国どこでも一律で、厚生労働大臣が決めています。その一律の医療行為の値段を規定しているのが「診療報酬点数」です。現在その点数1点が、全国どこでも10円に換算されています。 ただ、本当にそのことが公益にかなうのか考え始めると深淵な話になります。 健康保険を提供する保険者には、主に大企業の社員向けの健保組合、中小零細企業社員向けの協会けんぽ、主に公務員向けの共済組合、以上などに入れない自営業者や退職者など向けの国民健康保険のように様々な組織があり、加入者が保険者に支払う保険料の料率はバラバラです。 医療を提供する側も、個人経営の診療所から国が大きく経営に関与する病院まで、その形態は様々です。また、その原価には不動産価格や人件費なども含まれるため、地域差がかなりあります。さらに薄々分かっていることとは思いますが、医療従事者の技量や経験も千差万別です。 このように様々な差があるのに、それが価格に全く反映されないため、何をしたら高い診療報酬を取れるのかという探求は盛んに行われている一方、医療の質や患者満足度を上げることに対して、医療提供側にインセンティブが働きにくい状況です。診療報酬が公定のままでも、原価や質を反映するよう1点の換算金額を変える運用は可能なはずですが、業界のコンセンサスは得られていません。 医療従事者が患者に対する際に根拠として頼みにするのは、医学です。しかし、医学(に限らず自然科学一般)というものは完成された学問でなく、日々更新され続けています。正しかろう、と多くのLOHASMEDICALVIEW12何が正しいかは、時間と共に変わります。患者と向き合うだけでなく、勉強を続けるのも医師の大事な仕事。


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