ロハス・メディカルvol.125(2016年2月号)

患者と医療従事者の自律をサポートする月刊情報誌『ロハス・メディカル』の2016年2月号です。


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専門家に信じられていることが暫定的に「事実」として取り扱われているだけで、研究の進展によって実は間違っていたと分かることも少なくありません。よって、医師を中心とする医療従事者は絶えず勉強を続けていないと、古い知識に基づいた誤った治療をしてしまう危険があります。 また医学の扱う領域が、どんどん広く深くなっているため、専門分野については勉強を続けて最先端を把握している人であっても、そうであるからこそ他分野のことは大学卒業時点の知識に毛が生えた程度で止まっているという可能性はあります。ですから勉強家で良心的な人ほど、他分野のことについては軽々に発言しない傾向があります。 先ほども説明したように、医療従事者の免許は、あくまでも取得時点での最低限を保証するに過ぎず、現時点で正しいことをしているか否かは本人の自律に任されています。自律しない医療従事者は、なまじ権限を保証されているだけにタチが悪いわけです。 患者や保険者が払うのは同じ値段なのに、勉強を続けて最先端の知識を備えている医師と、そうではない医師がいるという点は、覚えておいて損のない話です。また、このことからお分かりになると思いますが、いわゆるタレント医師の言っている事柄が本当に正しいのかについては、眉にツバを付けて受け止めるよう、お勧めします。 そうは言っても、患者を診るだけで忙しい医師が勉強を続けるのは、時間的に大変なことです。さらに、最先端の論文の載る医学雑誌は相当に高額のため、単独で全部賄おうとすると経済的負担もバカになりません。そこで製薬会社で営業を担当するMRという人たちが、自社の薬の情報を提供する傍ら、参考になりそうな論文を集めて渡すなど、医師の勉強の手助けをすることは珍しくありません。これが医師の処方を歪めるという批判は根強くありますが、では、そういう接触を一切断っても勉強を続けられるような社会のサポートがあるかと問われると、言葉に詰まってしまうところです。LOHASMEDICALVIEW13


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