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LOHASMEDICALVIEW 日本勢が遺伝子組換の技術を持っていなかったわけではありません。1988年に我が国の遺伝子組換医薬品第1号として登場したのは、他でもない化血研のB型肝炎ワクチン「ビームゲン」でした。 それなのに血漿からの抽出を続け、遺伝子組換製剤を開発しなかったのは、先ほど説明した連産構造と輸出禁止が影響したと考えられます。 血漿から生産できる連産品の量の比は、ほぼ一定になると書きました。つまり、国内だけを販路として、最も売れる製剤の量に合わせて原料血漿を準備すると、その他の製剤に関しては原料が多過ぎることになります。 現在のところ日本で最も大量に売れる血漿分画製剤はアルブミン製剤です。困ったことに、アルブミンというのは、連産の最後にようやく抽出できるものなのです。 つまり、アルブミンの需要に合わせて原料を用意して製造した場合、凝固因子製剤などの半製品も出来てしまい、輸出できない以上は確実に余るのです。製品にして出荷しなければ全部捨てるしかないわけで、元が善意の献血であることを考えたら、それを捨ててまで遺伝子組換製剤を製造しようとは思わないことでしょう。 市場先細りの二つ目の原因は、薬価の持続的な下落です。 血漿分画製剤も、卸から先の流通は通常の医薬品と基本的に変わりません。通常は2年に1度ある薬価改定の対象となっています。 薬価改定は、市場の実勢価格に合わせていく方法で行われます。国内メーカーが複数(2015年では3社)存在し、加えて海外メーカー製品も入ってきているという競争があって、しかも納入価格の交渉は卸業者と医療機関との間で行われるため、メーカーが何と言おうが、医療機関への納入の際には、薬価から値引きが行われます(ここの所には医薬品流通の抱える大きな問題が存在するのですが、今回は触れません)。 この結果、改定の度に薬価が下がります。これを20年以上続けてきた結果、利幅がとても薄い製品群となってしまったのです。通常の医薬品であれば、改良を加えて新製品として出し薬価を再取得することも可能なのですが、血漿分画製剤ではほとんど期待できません。同じ献血から作られる輸血用血液製剤(赤血球や血小板など)に競争がなく、その薬価は下がるどころか、安全対策を加える度に上がり続けているのとも好対照です。 さて、血液製剤やワクチンなどの「生物学的製剤」は、原料と製造法が承認書通りか確認される一般医薬品同様のチェックに加えて、国立感染症研究所による国家検定で、製品そのものの品質もチェックされています。純粋な工業製品と異なり、原料や製造手段に生物由来の物を使い、その性質に元からバラつきがあるため、承認書通りに製造していたとしても基準から外れた物が出来てしまう可能性はあるためです。 化血研の製品群も、国家検定は通り続けていました。つまり、品質の基準は満たしており「自給による安定供給」へは貢献していたわけです。残った問題の、承認書と違う方法で製造していた法律違反に関して、承認書の方を実際の製造法に合わせて訂正することで解消をめざすというのが、部外者から見れば当然の判断です。 しかし、第三者委員会報告書は『一度開始された不整合や隠ぺい工作を当局に知られることなく中止することは極めて困難であり、化血研の役職員は、先人達が始めた不整合や隠ぺいを当局に報告する勇気もなく、それらを改善す配給割当制の原料18