ロハス・メディカルvol.125(2016年2月号)

患者と医療従事者の自律をサポートする月刊情報誌『ロハス・メディカル』の2016年2月号です。


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LOHASMEDICALVIEWる方策も見つからず、先人達の違法行為に呪縛されて、自らも違法行為を行うという悪循環に陥っていた』と記します。 承認書に訂正を加えるには、製造法の変更申請をする必要があります。そして、変更が認められると、その日までに国家検定を通過している製品か、製造変更承認日以降に生産を開始した製品でないと出荷できなくなります。 一般に、生産開始から国家検定終了まで9カ月近くかかるそうです。その間に欠品が起きないよう、前もって9カ月分を余計に生産して在庫にしてから変更申請する、というのが通例となっているそうです。 今回の化血研にとって致命的だったのは、連産の最も上流にある凝固第9因子製剤を抽出する段階で承認書と異なる工程を入れていたため、もし変更申請するなら、下流の計10製剤でも同時に変更申請が必要になってしまった、ということです。その中に、国内の需要が最も多い、つまりは原料の余らないアルブミン製剤が含まれており、余計に9カ月分作るためには、原料も9カ月分余計に必要でした。 ここで「国内自給」が壁となります。余計に生産するための原料血漿は、献血由来の物を日本赤十字社から買うしかなく、しかし各メーカーが買える量は、1年ごとに国の薬事・食品衛生審議会血液事業部会で決定されることになっています。割当量は献血の目標量とも連動しており、例年以上の割当を受けるためには、皆を納得させる理由が要ります。 ですが、原料が余っていて製造法改良のメリットが見えにくい凝固因子製剤で製造変更するだけでも不自然なのに、それだけ多くの製剤を道連れにするなんて、怪しまれるに決まっています。化血研は、既に製造法が違うとバレるリスクを冒してまで割当を増やそうとはしませんでした。 要するに化血研は、課せられた「国内自給の国策」と「安定供給」と「法令遵守」のすべてを満たすことがどうしてもできず、法令遵守の部分で頬被りをした、ということになります。 この問題、まだまだ奥が深そうです。次号以降も報告を続けます。19


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