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にぬるめの湯船で温まることを提案しました。良質の深い睡眠を得るには、就寝直後いかに急激に体温を下げられるかが重要で、温まっておくと下がり方が急になりやすい、ただし寝る直前の入浴や熱過ぎるお湯では逆に目が冴えてしまう、という話でした。 運動にも同じ効果を期待できます。午後から夕刻にかけて体を動かせば、体温がピークへと上がっていくのを助ける一方、就寝時間には体温が下がり始め、眠りやすくなるというわけです。 男子大学生の実験では、就寝前に運動を行うと、体温上昇とその後の急降下、深いノンレム睡眠の増加が認められました。昼間の眠気改善や入眠感(すんなり眠れたか)、朝の熟眠感という感覚的評価も上がりました。 この観点からは、運動が強過ぎないことも重要です。筑波大学体育系大藏研究室の北濃成樹研究員は、「ストレッチなど穏やかな身体活動ならよいのですが、リズムダンスなど心拍数が上がる動きは、就寝前はやめておいた方がよいでしょう。かえって興奮して目が冴えてしまいます」と解説します。 タイミングも重要です。眠気を誘うホルモンであるメラトニンが充分に作られ分泌されるかどうかが、睡眠の質を決定的に左右すると言っても過言ではなく、そこに運動が影響するからです。 メラトニンの材料は脳内物質のセロトニンで、セロトニンの材料はトリプトファンというアミノ酸です。その脳内での濃度を高めるのに、運動が一役買います。 食事から摂り込まれたトリプトファンは、アルブミンというタンパク質と結合して血中に存在し、そのままだと脳に入れません。それが、持久運動を行うと、遊離脂肪酸がエネルギー源として血中に放たれ、トリプトファンと入れ量にあると、あまり脳まで運ばれません。持久運動を行ってBCAAが筋肉に取り込まれると、経路が空く分、トリプトファンの運ばれる量が増えます。 こうして脳へのトリプトフ ァンの取り込みが増加することによって、脳内のセロトニン量増加とメラトニン生成の促進を期待できるのです。 というわけで、夜までにメラトニンを充分に生成しておくという観点からは、朝食や昼食で摂取したトリプトファンの脳への輸送を助けるよう、昼間に運動を行うのがお勧め、ということになります。代わってアルブミンと結合します。その分、血中のトリプトファン値は上昇します。 また、トリプトファンは、筋肉のエネルギー源となるBCAA(2015年3月号参照。ロハス・メディカルのサイトで電子書籍を読めます)と共通の経路で輸送されるため、血中にBCAAが大3メラトニン生成促進