ロハス・メディカルvol.127(2016年4月号)

患者と医療従事者の自律をサポートする月刊情報誌『ロハス・メディカル』の2016年4月号です。


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る場合があります。施設で暮らす高齢者の多くは認知症を抱えているので、眠りと目覚めに関する問題は大きくなりがちです。実際、夜になっても眠れずに動き回り、昼間は専ら眠って過ごす「昼夜逆転」となる方も現れます。こうなると、本人だけでなく、他の利用者や介護者にとっても大きな負担になります。 よく眠れない、しっかり目覚められないという症状が体内時計の乱れによるとして、光を利用した治療法が注目されてきました。明るい光に適切に当たると、体の中で時を刻む働きが強く正確になりま事場で日光に当たるのが良い睡眠をとるのに役立つことを前回ご紹介いたしました。超高齢化と言われる我が国では、介護施設で暮らす高齢者が今後ますます増えていくでしょう。そうなると、施設における日光の当たり方も課題になっていくと思われます。 年齢を重ねるにつれて、眠りが浅くなったり、昼間にうとうとしやすくなったりします。これらは加齢に伴う自然な現象なので、上手に付き合っていく他ありません。それに加えて認知症などの病気になると、睡眠の問題が重くなた群に比べて、寝つきが早くなった、睡眠感が良くなったなどの自覚的な変化が認められたという研究があります。 認知機能がかなり低下した高齢者を対象にした研究もあります。2群に分け、片方の群(62名)は連続5日間、①午前中30分の日光浴、②軽い運動、③昼間はベッドから離れる、④夜間は照明や騒音を下げる、という介入を受けました。通常の介護を受けた方の群(56名)と比べた結果、介入群では睡眠時間や覚醒の回数に差はありませんでしたが、覚醒1回当たりの時間が平均で4分短くなりました。しかも、介入群では昼寝が平均で10分短くなり、施設内の活動に積極的に参加したことが分かりました。 部屋の中に日光が入るよう「光庭」などを取り入れる介護施設は増えているようです。日光の有効活用が高齢者介護のキーワードの一つになると期待できます。第62回たかはし・まさや●1990年東京学芸大学教育学部卒業。以来、仕事のスケジュールと睡眠問題に関する研究に従事。2000年、米国ハーバード大学医学部留学。独立行政法人労働安全衛生総合研究所作業条件適応研究グループ・上席研究員高橋正也す。その結果、睡眠・覚醒の改善が見込まれます。 では、明るい光にどのように当たるのが良いでしょうか。人工照明を使えば、光の明るさやタイミングを調節できます。認知症の高齢者を明るい光に曝露させた研究成果をまとめて調べると、睡眠は良好になることが分かりました。特に、寝つくまでの時間や睡眠効率(横になっている時間に対する実際に眠っている時間の割合)の改善に効果的でした。 人工照明にはこのような利点がある一方、装置を購入する費用や電気料金がかかります。また、利用者が装置のそばにいるよう、介護者は配慮し続けなければなりません。もし日光を活用すれば、このような限界を大幅に解消できます。 認知症のない高齢者が連続21日間の午前中に屋外で40分ほど過ごしたところ、室内で日光に当たらないよう過ごし仕23LOHASMEDICALVOICE


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