ロハス・メディカルvol.136(2017年1月号)

患者と医療従事者の自律をサポートする月刊情報誌『ロハス・メディカル』の2017年1月号です。


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LOHASMEDICALVIEW可能性が出てきます。 特に、ある病気にかかる人が減れば減るほど、その病原体との自然接触による免疫への追加刺激がなくなって、獲得免疫が出動準備を整えたままでいられる期間も短くなることが知られています。「その病気にかかる人が少ない」ということは、たとえ接種対象者が皆で予防接種をしていたとしても、社会全体として見た免疫保有率は下がっている可能性があり、つまり意外と早く再流行可能な状況になってしまうかもしれないのです。 そもそも今その病気にかかる人が少ないのは、先人たちが営々と予防接種のバトンを受け継いで、人間による免疫の防波堤を築いてくれていたからです。予防接種しないということは、恩恵だけ受けて自分は貢献しない「タダ乗り」です。 しかも実は予防接種、単に病気の感染者を減らすだけでなく、医療資源の節約にもつながります。ある症状を訴える患者が出現した時、予防接種が広く行き渡っていれば、その疾患を原因として考慮しないで済むので、検査が少なくなるのです。本当に社会貢献活動なのです。 世の中には、予防接種したくても生まれつき免疫が弱くてできない人もいるので、そうでないなら自分のため社会のため接種を受けてください。 ただし、前回お知らせした通り、予防接種によって健康被害を受ける人は、ごくごく少ないとは言え、ゼロにはなりません。予防接種を受けることは、社会貢献活動の意味もあるんだという側面に目を向けたなら、健康被害を受けた人を社会が見捨てるのは大変な罪です。万が一にも救済され損なう人が出ないよう、基準を緩めに運用してもよいのではないでしょうか。費用が必要なら、皆で出し合えばよいのです。


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