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LDLと並んで動脈硬化の元凶とのレッテルを張られがちだったのが、飽和脂肪酸。しかし、こちらもそう単純なものでもなさそうです。国立がん研究センターが、循環器疾患やがんではない男女約8万2千人を平均約11年間追跡調査したところ、1日に摂取する飽和脂肪酸が最も多いグループで、脳卒中の発症リスクが最も低くなりました。心筋梗塞では逆に、飽和脂肪酸の摂取量が多くなるにつれて発症率は高くなり、特に男性で顕著でした。そもそも一口に飽和脂肪酸と言っても、炭素の鎖の長さで、短鎖、中鎖、長鎖に分類できます(表)。このうち、比較的短い中鎖脂肪酸は、水になじみやすい性質があり、肝臓で効率的に分解されます。つまり中性脂肪になりにくいのです。ココナナッツ油が最近人気なのも、中鎖脂肪酸を多く含むためです。飽和脂肪酸も汚名返上炭素の数名称主に含まれている食品の例飽和脂肪酸短鎖2酢酸酢4酪酸牛乳、乳製品中鎖8カプリル酸ココナッツ油、パーム核油10カプリン酸ココナツ油、パーム核油、ヤギ乳、牛乳、乳製品長鎖14ミリスチン酸ココナッツ油、パーム核油16バルミチン酸パーム油、ラード、牛脂18ステアリン酸豚肉、牛肉、牛脂、ラード不飽和脂肪酸18オレイン酸ひまわり油(ハイオレイック)、オリーブ油、肉の脂身18リノール酸ひまわり油(ハイリノール)、コーン油、綿実油、大豆油18Α-リノレン酸エゴマ油、アマニ油20アラキドン酸鶏卵、青魚、豚レバー、ワカメ20EPA(エイコサペンタエン酸)サバなどの青魚、海苔22DHA(ドコサヘキサエン酸)マグロなどの青魚、サケ、魚卵©PLAYMOBIL/GEOBRABRANDSTÄTTERSTIFTUNG&CO.KG飽和脂肪酸の「エイコサペンタエン酸(EPA)」や「ドコサヘキサエン酸(DHA)」は、中性脂肪値を下げる働きが確認されています。世界消化器病学会は健常者でも週に魚を3∼5回、米国心臓協会は最低週に2回、食べるよう勧めています。動物性油脂は適度に 動物性脂肪に多く含まれる飽和脂肪酸は安定した構造を持つため、中性脂肪として合成されやすい特徴があります。ただしコラムの通り、過度に恐れる必要はありません。トランス脂肪酸 マーガリンやショートニングなど、植物油を常温で固まるよう加工した油脂に多く含まれているトランス脂肪酸は、飽和脂肪酸やリノール酸以上に、中性脂肪値を上げることが報告されています。規則正しく 体内時計の乱れは、中性脂肪値を上昇させることが、時計遺伝子を欠損させたマウスの実験で確認されています。体内時計を正すには、バランスの良い食事を決まった時刻にとること。午後遅い時刻のカフェインや夜食は避けることも大事です。規則正しく就寝し、朝はしっかり太陽の光を浴びて、朝食をとりましょう。運動習慣を 代謝量を増やすので、中性脂肪値を下げることにつながります。日本動脈硬化学会では、中等度強度の有酸素運動をできれば毎日、1回に30分以上(週に180分以上)続けるとよい、としています。「中強度」と言われても分かりづらいですが、感覚的には、楽とややきついの間です。