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たかが貧血、されど貧血
貧血への対処法は、どのタイプかによって異なります。患者さんの多い鉄欠乏性貧血、続発性貧血は原因も分かりやすいので、普通の内科医で診断・治療が可能です。それ以外の場合は血液専門の医師を受診した方が無難です。
そのややこしい方の巨赤芽球性貧血から順に説明します。赤芽球というのは、ひらたく言うと赤血球の赤ちゃんです。ビタミンB12や葉酸が不足することで、赤血球へ成熟できないままになってしまいます。
食物中のビタミンB12は、胃の十二指腸側(出口側)から分泌される内因子が作用しないと吸収されません。手術で胃を切除していたり、高齢で胃の粘膜が縮んだりしていると、この内因子が出てこないので、注射で定期的にビタミンB12を補ってあげる必要があります。葉酸は、喫煙やアルコールの大量摂取によって足りなくなることがあります。食事に気を遣うと同時にお酒を飲みすぎないよう注意が必要です。
溶血性貧血の場合、赤血球の形に異常のある先天性のものと、免疫が赤血球を壊してしまうなどの後天性のものとがあります。赤血球を壊すのは脾臓という臓器です。先天性の場合、脾臓を手術で取り除きます。後天性の場合、ステロイドや免疫抑制薬で免疫を鎮め、それでもダメなら、やはり脾臓を摘出します。
再生不良性貧血は、難病です。血球成分を作る骨髄の中で血球のもとになる造血幹細胞の数が減ってしまいます。赤血球だけでなく白血球や血小板も少なくなるので、様々な症状が出て、重症だと命にかかわります。
重症だけれど患者さんが若く体力のある場合には、骨髄や末梢血幹細胞、臍帯血などの移植をする場合があります。比較的症状が軽かったり、移植するには高齢すぎたりする場合、免疫抑制薬やホルモン剤で治療します。早く見つけて早く治療するほど、良い結果が得られます。
続発性貧血の場合、原因となっている疾患の治療も行わなければなりません。潰瘍やがんなどで出血が続けば貧血になります。リウマチや慢性の感染症などの場合、免疫が活発に働いて炎症が起き、造血が抑制されます。
腎不全の場合、特に注意が必要です。腎臓は、骨髄に赤血球を作れと命令するホルモンのエリスロポエチンを分泌しますが、腎不全になると、この働きがなくなります。よって血液の材料が全部そろっていても、貧血になってしまいます。また逆に貧血だと腎臓の状態が悪化しやすいことも知られています。
これらには増血剤は効きません。 増血剤というものがあります。名前だけみると貧血の万能薬のようにも思えますが、実際の中身は鉄やビタミン類です。確実に効果があるのは鉄欠乏性貧血に限られますので、素人判断で服用する前に、必ずどのタイプの貧血なのか確かめましょう。
献血不足の隠れた犯人! 献血を申し出た女性の2割が、「比重不足(貧血)で不適格」と断られているそうです。実にもったいない話です。人のために役立ちたいと思うなら、まず自分の貧血を治すことが必要なのかもしれません。