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患者を支える13
NPO法人 日本IDDMネットワーク
*このコーナーでは、様々な疾患の患者団体や患者会がどのように患者さんを支えているのか、ご紹介していきます。
IDDMとはインスリン依存状態にある糖尿病の英語の頭文字を取ったもので、正式名病名で言うと『1型糖尿病』になります。ご紹介する日本IDDMネットワークは、元々は全国各地の1型糖尿病の患者・家族の会が連携して全国組織になったものです。
会の名称で、なぜ1型糖尿病と言わずIDDMという横文字を使っているのか、疑問に思った方もいることでしょう。その辺りにネットワークの存在理由も隠れているのですが、そこに触れる前に1型糖尿病と2型糖尿病の違い(06年1月号など参照)を簡単におさらいします。
1型の方は、血液中から細胞内に糖を取り込むために必要な「インスリン」を作る細胞が免疫の異常などによって壊れてしまう病気で、日本での年間発症率は、10万人あたり1~2人。生活習慣などとは関係なく、小児など若年で多く発症します。先進的治療年としてはインスリンを作り出す働きのある細胞の移植も行われていますが、現在のところ国内での現実的な選択肢は、血糖測定をしながら生涯にわたってインスリンを注射などで補充し続けるというもの以外ありません。
対して世界中で患者が増え続けている2型の方は、インスリンは体内で作られているものの、その量が足りなくなったり効きが悪くなったりするもので、体質と生活習慣とが発症の原因で主に成人以降に発症します。進行するとインスリンも使いますが、まずは運動や食事などの生活習慣改善から治療が始まります。
このように2つの型で原因も対策も主な年齢層も異なります。1型の場合は、阪神タイガースの岩田稔投手の例を見ても分かるように、インスリンを適切に補充することで普通の人と同様の生活を送ることができます。とはいえインスリンの副作用による低血糖発作の危険は常にあり、特に小児期に発症した場合には、家族はもちろん周囲の人間が事情をよく理解してサポートする必要があります。
しかし、糖尿病患者の中に1型の占める割合は1%程度なので、患者・家族が身近に情報交換できる相手も少なく、生活上でいろいろと悩むということが少なくありません。就職や結婚の際に苦労する人もいます。
そんな事情があるために、日本IDDMネットワークでは、病気に対する正しい知識を普及啓発したいと活動しているわけです。
きっかけは阪神・淡路大震災
元々は全国各地に患者・家族会があって、それぞれの会でカウンセリングやサマーキャンプ、情報提供、政策提言などをしてきました。しかし95年の阪神・淡路大震災の際、被災地の患者たちが、命に直結するインスリンの入手などに大変苦労をしました。そのことを契機に、お互いに助け合わないといけないのでないか、と同年「全国IDDM連絡協議会」として連携するようになり、00年に「全国IDDMネットワーク」としてNPO法人化、03年に現在の名称となりました。
法人化以来、佐賀市に事務局を置きつつ専従職員ゼロで活動を続けてきましたが、活動レベルが上がるにつれて、本業を持ちながら手分けして事務作業を引き受ける役員たちの負担が過大になり、09年11月から東京に職員を1人置くようになったのだそうです。
できたてホヤホヤの東京事務所にお邪魔してみると、東京・新橋駅にほど近いビルの1室、そこにある会社の机を1つ借りていました。
相手をしてくれたのは、千葉市に住む山上雅晴専務理事。本業は食品関係の会社員です。19歳になるお嬢さんが小学校1年の時に発症し、以来地元の患者会に参加、5年前からネットワークの活動を手伝うようになりました。
非常に多忙ながら、「娘のためにしていることの延長線なので、大変と思ったことはありません。むしろセミナーなどを企画運営すると、第一線の先生方のお話を何度も直接聴けるので、私自身が非常に勉強になっています」と笑います。
一方で、病気に対する社会の理解がまだまだ足りないこと、不都合なことは依然たくさん隠れていることを実感しているそうです。
たとえば、自己注射を続けてきた患者の中には老齢に達した方もいます。しかし家族がいない場合、自分でインスリン注射をできなくなると、注射は医療行為なので介護施設から出て行かざるを得なくなると聞きます。
また、たとえば小中学校で、学校側が過剰反応して特別扱いをするために、子どもが傷つく例も依然として少なくないようです。
「イベントを開く時には、患者家族だけでなく、必ず一般の人も巻き込むようにしています。教員向けのセミナーを開いたこともありますし、今度は介護施設の人と意見交換会も開かないといけないかなと思っています。経済情勢の非常に厳しい中ですが、研究費助成も続けていきたいですね」
職員は来たけれど、あれもこれもと考えると、役員が多忙なことには変わりなさそうです。
同会の活動 年会費は正会員、賛助会員5千円、個人会員は2500円。患者や家族、医療従事者などからなる会員数は約2900人。 糖尿病に関する正しい知識の普及啓発、患者や家族への療育指導・相談、患者に関する調査研究や政策提言などを行っている。 生活のノウハウを詰め込んだマニュアルを作成したり、会報を発行したりするほか、全国各地で積極的にシンポジウムやセミナー、交流会を開いている。その回数が09年には23回を数える。また1型糖尿病研究基金を創設し、1型糖尿病治療に役立つ先進的研究をしている研究者への助成も行っている。 同ネットワークの連絡先は、Tel 0952-20-2062。