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高血圧と仲良くしよう
高血圧は具体的に何が悪いのでしょうか。実は、それ自体は特に何の症状も起こしません。けれども放置しておいた時に様々な危険が高まるのです。「サイレント・キラー」(静かな殺し屋)という異名を持っています。
先ほどの道路を思い出してください。トンネルの壁が壊れすぎると、事故処理が間に合わなくなって、車線が塞がれてきます。この状態が「動脈硬化」です。
車線が狭くなると、ますます壁をこする回数が増えます。ひとたび高血圧状態になると、それがまた一段階上の高血圧を呼ぶ悪循環に入ってしまうわけです。
これを繰り返して完全に道が塞がれてしまうと、道の下流にある町(臓器)は飢えて滅んでしまいます。町(臓器)の中の小さな道路でも塞がれば、その先の友人は困りますね。
簡単に想像がつくと思いますが、この現象は血流量の多い臓器ほど起きやすいものです。血流量が多いということは、すなわち大切な場所ということ。脳、心臓、腎臓などは血流の多い臓器です。
だから高血圧の人は脳卒中(vol.25参照)や心筋梗塞(vol.35参照)、腎不全(vol.20参照)などを起こしやすいのです。もちろん他の臓器にも障害が起きる可能性があります。
腎臓の場合、それ自体が大切であると同時に、血圧を下げるために働く臓器でもあります。障害によってナトリウムや水分の排出能力が落ちれば、さらに血圧が下がりにくくなります。ここにも悪循環があります。
ひとたびこのような悪循環に入ってしまったら、生活の質はガタ落ち。医師が自覚症状のないうちに対処するよう勧めるのは、こういう理由があるからです。
簡単に、対処する、と書きましたが、実は高血圧にも大きく分けて2種類あります。①本態性高血圧と②二次性高血圧で、日本人の約9割が①です。本態性とは、分かりやすく表現すれば「原因不明」ということ。②は別の疾病が原因となって高血圧になっているものです。
①の場合は、とにかく血圧そのものを低くコントロールすることが目標になります。一方の②の場合は血圧を低くコントロールするだけでは問題が解決しませんので、原因疾患の治療も同時に行うことになります。
妊娠を考えているなら必ず血圧コントロールを。 晩婚化や出産年齢の上昇とともに無視できなくなってきたのが、妊娠と高血圧との関係です。高血圧の人が血圧をコントロールしないまま妊娠すると、いわゆる妊娠中毒症を起こすリスクが高まります。 妊娠中毒症の何が怖いかピンと来ないかもしれません。最近は「妊娠高血圧症候群」と呼ぶようになっています。この状態がひどくなると、お母さん側に脳内出血、高血圧脳症、脳浮腫、網膜症、腎不全などの危険が高くなります。また胎盤の機能が悪くなって、赤ちゃんに酸素や栄養が行かなくなり、赤ちゃんがお母さんのお腹の中で育つことができなくなってしまいます。 しかし、やみくもに降圧薬を使えば済むというものではありません。降圧薬の中には妊娠には使わない方がよいと考えられているものがあります。妊娠に気づいた時には、赤ちゃんはお母さんのお腹で育ち始めています。ですから、妊娠しようと考えている場合、また妊娠の可能性がある場合は、必ず事前に医師にその旨を伝え、食事や生活を改善すると同時に、適切な降圧薬を使って、その日に備えることが大切です。