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今さら訊けない 食事とサプリの基礎知識
どれが足りないのか分からないけれど、とにかく手当たり次第にサプリメントを取れば健康的なはず、と思っている方、いませんか。残念ながら、かえって健康を害する危険があります。
特にミネラルやビタミンの場合、最低限必要とされている量のある一方で、これ以上取ったら危険、という上限量もあることが多いのです(主な過剰症状は下表参照)。健康被害が出たら、何のためのサプリメントか分かりません。取りすぎは絶対にダメです。もちろん、過剰摂取は普通の食品でも起こりえます。
適正な量を取ったはずなのに、どうも効果が表れないということもあるでしょう。これには二つの理由が考えられます。
第一に、サプリメントは薬と違いますから、使ってすぐ効果を実感するなんてことはないはずということ。もしそういう実感があったら、元々の状態がよほど悪かったわけで、重大な疾患が隠れているのではないかと心配にすらなります。使うなら、少し気長に構えてください。
第二の理由として、物質はあっても働けないような状態に体がなっていることも考えられます。
体の材料になるにしても調節の部品になるにしても、時・場所・仲間の条件がそろっていないと働けないことがあります。まず、口から摂取したものが、ちゃんと消化され効果を出したい場所まで運ばれるというのは、結構大変なことです。体の他の部分でもその物質を必要としていたら、横取りされてしまいます。また、きちんと到達しても、一緒に働くべき物質が来なかったら、力を発揮できないままです。
この理屈を視覚的に分かりやすく表現したものとして、よく使われるのが「桶理論」(コラム参照)です。丈の足りない板(栄養素)があると、そこから水があふれてしまいます。貯められる水(体の健全さ)を増やすには、丈の長い板を延ばしても意味がなくて、最も短い板を継ぎ足すしかありません。
できるだけ多くの種類の食品をバランスよく取るべきと言われることに納得がいったのではないでしょうか。サプリメントは不足している栄養素を取らないと意味がないのも、お分かりいただけますね。
血液や毛髪を検査すれば、不足している物質を確かめることができます。そこまではちょっとというなら、不足しがちなミネラルやビタミンを一度にまとめて底上げできる「マルチミネラル」「マルチビタミン」を使うのも一つの手です。
最も足りないものが全体の能力を規定する 木の板を何枚もくくって桶を作った時、貯められる水の高さは最も短い板の高さと等しくなり、それ以上はあふれてしまいます。長い板を継ぎ足しても水の量は変わりませんが、短い板を継ぎ足せば水の量は増えます。この原理はほとんどの体内現象について当てはまると考えられます。また、「会社の強さは最も弱い社員に規定される」といったように、組織マネジメントの分野でも使われます。
過剰に摂取すると他の栄養素が不足することも。 栄養素同士は、相性よく働く組み合わせのある一方で、体から出ていくときに他の栄養素を道連れにする組み合わせもあります。この場合、ある栄養素の過剰摂取が他の栄養素の不足症状となって表れることになります。サプリメントの使い方が難しい理由です。こうした組み合わせとしてよく知られているのが、窒素(アミノ酸、ペプチド、たんぱく質の成分)とカルシウムで、過剰な窒素はカルシウム不足を起こします。逆に過剰なカルシウムが、マグネシウム不足を招くこともあります。