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神経痛 うーん、まいった!
長らく特発性神経痛の代表ともいわれてきた三叉神経痛。顔に激痛が走るものです。一般に「顔面神経痛」で知られますが、顔面神経は知覚でなく運動をつかさどっているので、この表現は不正確。患者は50~60代に多く、女性が男性の1.5倍~2倍にものぼります。
三叉神経は、顔、口の中の粘膜、歯の感覚をひろってくる末梢神経(図)。顔の左右にそれぞれ3つに枝分かれして広がっています。神経痛はたいていその第2枝か第3枝に沿って起こります。右側が多く発生し、これは骨盤のゆがみのせいとも言われますが、定かではありません。
三叉神経痛は、以前は原因がわからず特発性と診断されることがほとんどでした。今では技術も研究も進み、ほぼ症候性と診断されるようになりました。原因はずばり、動脈硬化などで蛇行した血管が三叉神経を圧迫するため。なかでも三叉神経が脳幹から出る部分には「鞘」がないため、刺激に敏感なのです。脳腫瘍により圧迫されることもありますが、ごく稀です。
受診から治療まで。手術が有効
三叉神経痛の場合、クーラーの冷気が顔に当たっただけで痛い、目を動かしたり何かにちょっとつまづいただけで顔が痛む、女性の場合はお化粧もできない、といった普通では考えられない状況から「神経痛では」と思いあたることも多いようです。その場合は明らかに、脳神経外科や神経内科へ直行となります。
やっかいなのは、歯磨きや飲食で歯や歯ぐきが痛む、あるいは高い声が響いて痛いなど、歯科や耳鼻科の疾患との区別がつきにくい場合。「歯が痛んでどうしようもないので抜歯してしまった」というトラブルも後を絶ちません。
医療機関で三叉神経痛の診断を行うにあたっては、症状の経過の詳しい問診がもっとも大切。典型的な症例の場合、痛む部位や痛みの種類、痛むタイミングや状況、痛み出した時期、痛み以外の症状や持病などまで、患者側からはっきり伝えられれば、慣れた医師ならかなり診断の見当がつきます。もちろん綿密な検査も行われます。
根本的治療は、手術です。圧迫している血管を三叉神経からはずすもので、熟練した医師がきちんと行えば、改善率は9割以上。再発も防げます。
ただし部位が部位だけに一定のリスクもあり、希望によっては対症療法がとられます。主に抗けいれん薬を用いた薬物療法が一般的です。他にも、神経に薬液を注入して痛みを麻痺させる神経ブロックや、患部に放射線を照射するガンマナイフも効果が報告されています。前者は1回やれば1年以上の効果が続くと期待できるものの、かなり高価で、顔面にこわばりが残るなどの問題もあります。後者も副作用が不明です。
どの治療法にするかは、主治医と相談して発作の頻度や年齢、体調などを考慮し、慎重に決めていってください。