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体からの定期連絡 便が変だったら
意外と奥が深い便秘
続いて便秘です。便秘とは排便が不快な状態になったり、回数が減ったりする状態です。急性のものと慢性のものとあります。
便秘になると便が硬く排便が難しくなります。そして直腸が完全に空になった感じがしません。排便の回数も減ります。ただし、毎日排便しないでも、便の色・硬さに大きな変化がなく、以前の排便パターンと異なるのでなければ、便秘とは限りません。
前述のように便が消化管を通過する速度が遅いと、便秘になりやすい傾向があります。食物繊維の摂取が不足している時などです。大腸での便の通過速度が遅くなると、水分吸収が高まり、便が硬く乾燥して、さらに通過しにくくなるという連鎖が起きます。繊維質は便中に水分を蓄えるのに役立ち、排便しやすくさせます。
高齢者は特に注意が必要です。直腸は年齢とともに広がり、便意を感じるまでにたまる便の量が増え、長時間とどまっている分、便が硬くなり排便しづらくなります。
体を動かすと腸の働きも活発になります。逆に運動不足は便秘の原因です。このため、病気で寝たきりの人はしばしば便秘になります。
やはり前述のように医療や薬には、腸の働きに影響を与えるものも多くあります。病気も同様です。慢性の痛みや心理状態、特にうつ病は、腸の働きを悪くして、便秘の原因となります。甲状腺機能低下や高カルシウム血症、パーキンソン病などは腸の通過が遅くなります。糖尿病もしばしば消化器の働きが悪くなり、神経や脊髄の損傷も便通を遅くします。
通過速度が極端に遅くなって結腸無力症と呼ばれる状態になると大変です。通常なら便通を起こす刺激に大腸が反応しなくなる、つまり便意を感じなくなって、重症の慢性便秘になります。結腸無力症は高齢者、衰弱した人、寝たきりの人に多く起こりますが、健康な若い女性にも起こることがあります。腸の運動が習慣的に遅くなっている人や、下剤や浣腸剤を長期間にわたって使用している人に起こりやすいです。
通過スピードの問題ではなく、腸管が細くなったり詰まったりして、便秘が起こることがあります。がんや胃石、腹部の手術などで腸管が細くなったり、詰まったりします。
また腸の働きや状態に問題はないけれど、骨盤と肛門の筋肉をコントロールできず、出口が開かないので排便できないという状態もあります。排便困難と呼ばれます。排便困難がある人は便意を感じても、便が硬くなくても排便できません。
便秘は、それ自体の苦痛に加えて、健康に様々な悪影響(表)を与えることが知られています。
対処するには、便秘の原因となっている病気や排便困難がある場合、まずその治療を行うことが必要です。
特に病気などがない場合、腸の働きの異常が最大の原因と考えられますので、まずはそれを正常に近づけることが大切です。
次項で説明します。