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患者を支える10
日本難病・疾病団体協議会
*このコーナーでは、様々な疾患の患者団体や患者会がどのように患者さんを支えているのか、ご紹介していきます。
前回までは、疾患ごとの患者団体、つまり患者さんが集まって組織になっている所を主にご紹介してきました。今回は、肝臓病、パーキンソン病、膠原病など様々な疾病の患者全国組織と各都道府県の難病団体連絡協議会が集まっている組織、その名も「日本難病・疾病団体協議会」をご紹介します。
09年7月末現在で62団体、1098支部、のべ約30万人が参加しています。①自分の病気を正しく科学的に把握する②病気に負けないようにお互いに励まし合う③よりよい療養環境をつくるために社会に働きかける「患者会の3つの役割」を基本とする患者・家族自身による当事者運動を行なっており、日本の患者運動のナショナルセンターをめざしているそうです。
72年に発足した「全国難病団体連絡協議会」(全難連)と86年に発足した「日本患者・家族団体協議会」(JPC)が、05年に合体した組織です。もともと両者の加盟団体が一部重なっており、また02年3月に難病治療への自己負担導入が計画された時に、反対運動を共同して行なったことから、合同の気運が高まったと言います。
難病対策の実施主体は都道府県で、それに国が補助金を出しています。このため、何か要望する際は、国に対してと都道府県に対してと、同時に行なう必要があります。JPCは地方組織が加盟しており都道府県への要望ルートを持っていて、全難連は全国組織の集まりゆえに国とのパイプが強く、お互い補完関係にありました。
協議会の事務局を訪ねると、東京・巣鴨の駅から徒歩数分のビルにある全国腎臓病協議会事務所(全腎協)の一角に間借りしていました。ちなみに、全腎協は会員数約10万人と協議会加盟組織の中で最大です。
応対してくれたのは、坂本秀夫・常務理事。奥さんが多発性硬化症を発症したことから、1993年ごろから全難連の活動を手伝っていたと言います。協議会発足の1年前に職場を早期退職し、以来ただ1人の専従職員として常勤しています。現在の事務局の陣容は、他に非常勤職員が2人いて計3人。普段は、患者団体からの要望取りまとめと、それを厚生労働省や国会議員に取り次ぐことをしています。
会員数が多い割に事務局は小さく、「人手が足りないけれど、しかし加盟団体もお金に苦労しているので簡単には分担金を増やせないんです」と坂本さんは言います。来年の総会後に、患者や家族でない福祉の専門家を常勤の事務局長をスカウトすることが当面の目標です。
都道府県ごとに基盤の強さまちまち
病を抱えて経済的に困窮するから運動も必要になるという原点に立ち返れば、加盟組織がどこも財政事情が厳しいのは当然の話です。このため請願活動に付随して寄付を募るような工夫をしているほか、加盟団体を拡大してスケールメリットを出すようなこともめざしています。
協議会の請願の結果として各都道府県に設置された「難病相談支援センター」の業務を受託し財政基盤を強めた難病団体連絡協議会がある一方で、いまだ6県には連絡協議会が存在しません。こうした所に協議会ができるよう支援するのも事務局の大切な役割です。
また、名称の最初に出てくることもあって難病ばかりに目が行きがちですが、実は患者団体であれば、どのような疾病でも加盟できます。
「長期にわたって病気を抱えて生活していかなければならないのは、難病だろうが、慢性疾患だろうが、小児慢性疾患後の成人患者だろうが同じです。しかし疾病によって医療費の額が違うなど、難病と認定されるか、されないかで負担が全然違います。厚生労働省の担当者が言うには、外国では難病が5千から7千あるらしいです。しかし、日本では45疾病に今年度補正でようやく11疾病が足されるだけです。このような状況は社会正義にもとると思います。特定疾患の範囲を一気に広げるか、ある程度以上の期間の治療が必要になったら一律に救済対象とするか、方法論を大きく転換する必要があると考えています」
このような考え方でどんどん加盟団体を増やそうとしているそうです。患者数・会員数が少なくて行政になかなか声の届けづらいような患者団体にとってみると、加盟することで国や地方自治体と交渉することが可能になります。協議会も財政基盤が安定するので一石二鳥です。
「少人数で悩んでいる患者会の方々には、困ったことがあったら、いつでも頼ってきてほしいと思います」と坂本さんは言います。「既に実績を積んできている患者団体の方々も、ぜひ一緒にやりませんか」
会の活動 加盟団体の内訳は都道府県の難病団体連絡協議会が38、疾病別全国組織が24。加盟団体の年間分担金は、前年度一般会計の1%以上もしくは2万円の多い方。賛助団体ならば年5千円。 毎年5月に総会を開き、その翌日に超党派の国会議員に対する請願を行なっている。ことしは8項目の請願に対して91万6377筆の署名を集めた。過去には、請願の結果、各都道府県に「難病相談支援センター」が設置されるようになったこともある。 東京で2ヵ月に1度、小さな患者団体も含めて、どのように要望活動を行なったらよいのか教える勉強会も開いている。 同会の連絡先Tel 03-5940-0182