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壊れて分かるありがたさ 慢性腎臓病、腎不全
腎臓がいかに多くの役割を果たしているか説明しました。腎臓の機能が落ちると大変だという感覚は、持っていただけたと思います。
では、なぜ腎機能が落ちるのでしょうか。
一般的に腎機能が低下すると言った場合、それは働くネフロンが減っていくことを意味します。前頁の図でも分かるように、ネフロンの働きを支えているのは主に糸球体と尿細管です。多くの人にとって最初に起きてくるのは、糸球体が壊れて、腎臓の血液濾過量(腎血流量)が減ってしまうことです。
糸球体の中にある毛細血管は、大変高い圧力で大量の血液が流れ込んでいるため、もともと傷みやすくなっています。血管の強さと流れ込む血流とのバランスを崩すような力が働くと、簡単に壊れてしまうのです。
なかには先天的に腎機能の低い人(コラム参照)もいます。また、バランスを崩す力には、外傷、感染症、疲労、鎮痛薬など薬剤の影響といったものがあります(前項表参照)が、現代人で特に問題になるのは生活習慣病です。
以前から何度も説明しておりますように(05年12月号「高血圧特集」、06年1月号「糖尿病特集」、06年12月号「メタボリックシンドローム特集」参照)生活習慣病になると、毛細血管が傷む、血圧が上がる、動脈硬化になる、それらが絡み合って悪循環を起こす、という何重苦にもなります。
そして、実は腎臓自身がその悪循環に深く関与しています。腎機能が低下して腎血流量が減る→レニンを分泌して血流量を維持しようとする→血圧が上がる→さらに腎臓が壊れ生活習慣病も進行する、という流れです。
さらに腎臓が他の臓器と比べても厄介なところとして、糸球体が一度壊れてしまうと再生しないことが挙げられます。つまり一度悪循環に入ってしまうと、食い止めるのが非常に困難なのです。
困ったことに、腎血流量が減っただけではなかなか自覚症状が出ないので、対処しようという気にもなれません。しかし既に悪循環は始まっており、また腎臓が血管の塊で全身の血管状態をよく反映していることから、腎臓での自覚症状はなくとも、脳卒中や心筋梗塞など命に関わる心血管疾患のリスクは上がっていることが分かってきました。
このため、これら心血管疾患の発作に突然襲われないためには、たとえ自覚症状がなくても早くから対処を始めた方が良いとの考え方が昨今の主流です。
この考え方から提唱されている疾病概念が慢性腎臓病(CKD)。日本腎臓学会の推計では、実に日本人の20人に1人がこのCKDの状態であると言われます。
過剰なダイエットにご用心 栄養不足が起きると腎臓が壊れやすくなります。また、低体重で生まれた胎児は、生まれながらに糸球体の数が少ない傾向にあります。どちらも過剰なダイエットが、自分や子どもの腎臓を壊すことになりますので、十分ご注意ください。