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壊れて分かるありがたさ 慢性腎臓病、腎不全
さて、残念ながら腎機能の低下が分かった場合、どのようにしたらよいかを見ていきましょう。
なお当たり前ですが、必ず医師の診察を受け、場合によったら専門医への紹介状を書いてもらってください。腎不全で透析せざるを得ない患者さんの多くが、合併症が出るなど手の施しようがない状態になってから受診しており、医師たちに少なからず無力感を与えています。
そのことを大前提に説明しますと、まずは残された腎臓をできるだけ大事に温存していくことが基本になります。日常生活の中で腎臓を壊すことは表のように様々ありますので、そういったことを極力避けます。
食事も非常に重要です。塩分を取りすぎると、体液の調節基準量(セットポイント)が高くなり、血圧が高くなり、その分、毛細血管が傷みます。タンパク質を取りすぎると、タンパク質からできた老廃物(=尿毒素)を排泄している腎臓に負荷がかかります。
このため、腎臓をいたわる食事としては低塩・低タンパクにするのが一般的です。ただし低塩、低タンパク食にすると、栄養が不足しがちなので、そこは注意して下さい。また、腎機能低下の原因によっては別の食事が必要になる場合もあるので、生兵法はせず、必ず医師の指示に従いましょう。
また高血圧や糖尿病などの生活習慣病がある場合は、放っておいたら腎臓も悪くなる一方なので、まずその元疾患をしっかりコントロールすることが必要です。投薬も行われます。
特に近年、血圧をきっちりコントロールすることが、腎機能低下の進行を遅らせるために大変重要であることがわかっています。例えば、糖尿病がある人などでは、血圧130未満/80未満へのコントロールが重要です。家庭での血圧の重要性も明らかになってきました。一方で、腎臓や心血管を保護するのに有効な降圧剤の使い方が分かってきています。食事に気をつけ、家庭血圧も測定しながら、必要であれば、適切な降圧剤などの投薬を受けて、腎臓が悪くなるのを遅らせるようにしたいものですよね。
こうして腎臓を大事に使って、それでも腎不全になってしまったら、もはや残された治療は透析か腎臓移植しかありません。
透析は腎不全患者にとって大きな福音ではありますが、水分摂取を極端に制限しなければならないなど生活上の制約が非常に大きいものです(コラム参照)。また、腎臓が持っているホルモンの分泌や活性化の働きは、薬剤で補っていくことになります。
透析とはこんな治療です。 人工透析には、「血液透析」と「腹膜透析(CAPD)」の2種類があります。どちらも腎臓で行われる老廃物除去、水分量調整、電解質調整を代替するものです。 ここでは、ほとんどの方が利用している血液透析から説明します。腕の手首に近い静脈に針を刺して血を管へ入れ、腎臓の代わりをするダイアライザー(透析器)という機械を通した後で、血を出したところより心臓に近い血管へ戻します。 透析器へ通すには、分速100~200mlと大量に血を運ぶ必要がありますが、普通の静脈ではそこまでの血流量がないので、事前に動脈と静脈を一部つないで静脈を太く発達させる「シャント」というものを作っておく必要があります。 シャントを1回作れば永久に使えるというわけではなく、壊れることもあり、その場合はより心臓に近い部分か反対の腕に作り直すことになります。 血液透析は週に3度、1回4時間かかります。余分に貯まりすぎた水分を透析で一気に抜くと低血圧で倒れてしまうので、あまり抜かなくても済むよう、日常の水分摂取はしっかり制限することが必要です。また、生野菜に多いカリウムや肉・魚に多いリンなども除去しきれないので、生野菜、肉・魚ともに摂取制限が必要です。当然、塩分制限も必要です。 家庭での腹膜透析液の交換などの自己管理がきちんとできる方については、CAPDを選ぶことも可能です。詳しくは医師にお尋ねください。