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「わかっちゃいるけど、やめられない」? 依存症
物質依存は、精神的な依存にとどまらず身体にも変化や症状が現れます。
まず、重要な特徴として、「耐性(薬物耐性)」があります。依存性のある物質を摂り過ぎていると人間の身体の方が適用するようになり、代謝が速くなったり神経組織が反応を弱めてしまったりして、効かなくなることがあるのです。これが「耐性ができた」という状態で、以前と同じ快感を得るためにどんどん摂取量を増やしていく事態に陥ります。
さらに摂取を続けていると、物質によっては「身体依存」が起きます(アルコールやモルヒネなどでは起こりやすく、覚せい剤やコカインなどでは起こりにくいようです。)その物質が依存しているのが通常の状態であるような錯覚がおき、体内から消失していく過程で不都合な症状が現れるようになります。これが「退薬症候(離脱症状)」。いわゆる禁断症状です。手の震え、集中力の欠如、イライラ、不眠など、物質によりその症状はさまざまで、幻覚や妄想、けいれん発作等を生ずるものもあります。
この不愉快な症状を軽減したり回避したりするため、同じ物質(または関連物質)を探し求め、摂取することになります。こうして、耐性と身体依存による退薬症状を抑える行為の繰り返しによって、依存は強化されていくのです。
また、依存症は「否認の病」といわれるのをご存じでしょうか。2種類あるといわれます。第一の否認は、依存症であることを認めないもので、現実を歪曲したり過小評価して事実を認めない傾向があります。第二の否認は、依存していること以外に問題は生じていないと主張し、コミュニケーションや対人関係の問題を認めないものです。否認は依存症と診断される上で必須の項目ではありませんが、重要な特徴です。家族など周囲の人は、本人の状況を客観的に見極めて、否認を助長しないように注意しなければなりません。
依存とアディクション(嗜癖) 臨床心理学やメンタルヘルスの観点からは、物質依存は、アディクション(嗜癖)という広い概念のうち、精神作用物質によるものでかつ重症化したもの、と考えることができます。アディクションは、害があるのにやめられない不健康な習慣へののめりこみで、物にかぎらず、買い物やギャンブルなどの行動から人間関係まで、あらゆるものがその対象になります。虐待やDV(ドメスティック・バイオレンス)、摂食障害、ひきこもりといった近頃の社会問題も、アディクションと考えることができます。