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心の病 がんばらないでください
現在、なんらかの神経疾患、いわゆる「心の病」で治療を受けている日本人は、実に300万人。しかもここ数年、10万人単位で増加を続けています。のみならず「成人の15~20%は、人生のいずれかの時点で何らかの精神疾患を経験する」とも言われており、実際には受診者の何倍もの人が、心の病を抱えながら生活していると考えられます。最も多いとされるうつ病など、「心の風邪」と表現されるくらい、身近な病気となっているのです。
それでも改めて「心が病む」とはどういうことか、と問われると、意外と言葉に詰まるのではないでしょうか。そこで今回は「心の病」ビギナー編、基本の「き」から見ていきたいと思います。
「心の病」の定義とは
「心の病」が何たるか、まずは難しい定義から確認しておきましょう......と思いきや、「心の病」はおろか「精神疾患」という言葉についても、医学上のしっかりした定義は見あたりません。というのも、精神や行動に生じた何らかの障害・疾患の〝総称〟でしかないようなのです。
しかも、これに該当する個々の障害・疾患についても、その定義や診断基準は医学上、厳密には統一されていません。そのため同じ病状でも、精神疾患の分類法によって病名が微妙に違う、なんていう事態もありえるのだそうです。
ちなみに分類法は、大きく2種類。世界保健機関(WHO)の示す「ICD‐10」という国際的な疾患分類と、アメリカ精神医学会の定めた「精神障害の診断と統計の手引き」(DSM-Ⅳ-TR)です。特にDSMでは 、身体疾患や本人の置かれている環境、社会での活躍度等も考慮しつつ、精神疾患を立体的に捉えるのが特徴です。そのため日本の医療現場でも近年、こちらが使われることの方が多いといわれていますので、参考までに大まかな分類を左に示しておきます。
いずれにしても、ICD-10もDSMも、どちらも診断基準やガイドラインとして用いられる〝症状の分類〟にすぎません。「心の病」とはつまり何なのか、どうやって生じるのか、それを知るには、そもそも「心とは何か」というところまで立ち返る必要がありそうです。