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混合診療ってどうなの?
医療費が年32兆円と言われますが、そのお金がどこから出ているか、ご存じでしょうか。図をご覧ください。
皆保険制度を考えるということは、国民にどの程度の医療を提供して、その際に公がどこまで負担すべきかを考えるということです。
医療費という「海」に注ぎ込むお金は、さまざまな経路でいったん公の「湖」へ集まりますが、元をただせば納税者であり、被保険者であり、つまり国民であり、また企業の降らせた「雨」とそれが集まった「川」なのです。そして、その海の水は再び国民へと戻っていきます。
あまりにも仕掛けが大きくなっているために他人事のように見えてしまうかもしれませんが、完全に私たち自身の問題です。そして国民主権ですから、川の流量を増やすも減らすも実は私たち自身の選択にかかっています。
混合診療を解禁するということは、患者さん自身からの負担を増やすことです。その際に、他の川の流量を絞らなければならないと決まったわけではありません。公とは私たち自身なのですから、流量を維持すると決めることは可能です。そして外国へ吸い取られてしまう分はあるにせよ、流量を増やした分が全部消えてしまうわけではなく、また国民へと還流します。
研究開発が促進されることで国内の医療産業が競争力を持って外貨を稼ぐようになったら、流量を増やした分以上に国民へと還ってくる可能性だってあります。
医療費を出しっ放しのコストと考えてしまい、お金を出したくないと思うのは、有効に使われておらず損していると感じるから、ということはないでしょうか。
自分たちの出したお金だから有効に大切に使うのだ、自分たちのために有効に使われるお金なのだから喜んで出すのだという自律性が失われていることこそが問題で、混合診療を解禁するかどうかは象徴的な意味はあっても本質ではありません。
なぜ自律性が失われたか考えると、厚生労働省のコントロールと表裏で国民が主体性を喪失していることに気づきます。
そして、国民が主体性を喪失している限り、国民皆保険の理念を守るには厚生労働省に頑張ってもらうしかない、という卵と鶏のような関係になっています。
難しく見えるかもしれませんが、どの道を選ぶのかは、私たち自身の問題です。よい機会なので、じっくり考えてみませんか。
ビジネスクラスモデルとモルモット化 現段階で混合診療が解禁されると、短期的には自費部分で最新の医療を受けられるのは、一部の高額所得者だけになると考えられます。 航空業界では、ファーストクラスとビジネスクラスの運賃だけで利益が出るというモデルを編み出したことで経営が安定し、しばらく後に機種更新による安全性向上という形でエコノミークラスの乗客にも恩恵がもたらされたといいます。 この構図が医療にも当てはまるので混合診療を解禁すべしと主張する人と、当てはまらないと主張する人とがいます。 当てはまるとした場合、高額所得者は高い金を払った上に、中間層以下のための実験台を引き受けることになるという見方もできます。