情報はすべてロハス・メディカル本誌発行時点のものを掲載しております。特に監修者の肩書などは、変わっている可能性があります。
もはや国民病。腰痛
数ある腰痛のなかで、一番多くの人々を悩ませているのはどれでしょうか?
正解は「筋・筋膜性腰痛症」です。長時間のデスクワークや車の運転、姿勢が悪いことなど、日常生活のなかに原因があることがほとんど。「近所へも車を使うようになり、歩かなくなった」「最近体重が増えてきた」といったちょっとしたことがきっかけで、誰でも発症しかねません。
主な原因は、筋肉や筋肉の束をまとめている膜(筋膜)の過度の緊張・疲労。背骨の前後には体を前に曲げる筋肉(大腰筋など)と後ろに反らせる筋肉(脊柱起立筋・広背筋など)があって、これらがバランスをとりながら正しい姿勢が保たれています。しかし無理な体勢を続けていると、両者のバランスが崩れ、本来ゆるいS字を描いている背中から腰にかけての骨が、反りすぎたりまっすぐになりすぎたりしてしまいます。このとき一方の筋肉に負担がかかって過緊張となり、疲労性の炎症が起きてしまうのです。
もっともよくみられる症状は「朝、腰が痛くて目が覚めるが、歩くと痛みが楽になる」というもの。そのほか、
●腰が重だるくなりやすい
●前にかがんだときに痛む
●長時間の運転や着席で痛む
●寒い中で仕事すると痛む
●筋肉が硬く凝った状態
●押さえると痛む
などなど。心あたりが複数ある方も多いはず。ただし痛みの程度もさまざまで、医療機関でレントゲン検査をしてもたいてい異常が認められないといいます。なんだかやっかいに聞こえますが、一方、このタイプの腰痛は、心がけ次第で慢性化を防ぐことができるものでもあります。逆に放っておくと慢性化し、腰痛を繰り返しやすいのも特徴です。
筋・筋膜性腰痛症
治療は長丁場
発症から1週間程度は痛みの強い時期で、日常生活さえ困難なことも。ただし、安静に横になったり薬を使うより、腰痛体操やストレッチなどで腰の筋肉に運動負荷を加えることが一番の方策です。筋・筋膜性腰痛症の治療で手術になることはありません。症状によっては痛みの少ない楽な姿勢で安静に横になったり、痛み止めや筋弛緩薬などの飲み薬、外用薬(湿布、塗り薬他)を使用します。コルセットで外から固定したり、強い痛みには医師の診断で注射を打つこともあります。
その後も油断は禁物。再発の恐れが残っています。再発を防いで痛みをより軽減し、日常生活を制限なく送れるよう、普段からできるだけ歩くよう心がけてください。腰痛体操やストレッチは予防にも効果大。デスクワークや車の運転など長時間同じ姿勢をとらねばならない人は、約30分~1時間ごとに休憩を入れて、歩いたり、胸を開くようにストレッチをして猫背を背骨本来のS字カーブに近づけてください。場合により、腰への負担を軽減させる牽引、電気治療、温熱療法、マッサージなどの物理療法を行うこともあります。いずれにしても継続的な取り組みが必要。常日頃から、姿勢を気にかけて過ごしたいものです。