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息が苦しい「喫煙肺病」COPD
身も蓋もないことを言いますと、壊れた肺胞は元に戻りません。COPDの場合も、元の何もない状態には戻せません。ただし、治療することにより、病気の進行を遅らせ、息切れなどの自覚症状を軽くし、運動能力を高めることはできます。軽度のうちに取り組めば、同年代の健康な人と同じような生活を送ることも可能です。
その治療は、様々な生活習慣改善の組み合わせになります。
具体的には、まず必ず禁煙をしましょう(前項コラム参照)。絶対です。禁煙を行えば、呼吸機能の減少率は禁煙2年以内に、喫煙していない人の呼吸機能減少率とほぼ同じになることがわかっています。
それから、気管支に炎症を引き起こすような感染症にかかると、肺の状態を悪化させる危険があります。風邪やインフルエンザにかからないよう注意が必要です。冬になったら必ずインフルエンザなど感染症対策のワクチンを接種しましょう。
現実に炎症が起きてしまった場合は、速やかに緩和するための投薬も行われます。きちんと服用しましょう。また酸素不足が中程度以上の場合、二次的に別の疾病を引き起こすのを防ぐため常時酸素を吸入することになります。今は「在宅酸素療法」が保険適応となっており、酸素の補助により快適な家庭生活や外出もできるようになりました。でも、やはり、酸素を吸わずに生活できる方が快適ですね。
ここからも大事です。COPDでは、狭くなった気管支を通して呼吸をするために、じっとしていても呼吸筋に大きな負担がかかります。呼吸だけでも健常者の1.5~2.0倍のエネルギーを消費していると言われています。
しかも、日常的に息切れや呼吸困難を自覚するようになると、知らず知らずに体を動かすことを避けるようになります。足腰の力が衰えます。食事中に息苦しさを強く感じることもあり、食べる量も減ります。よく"老化は足腰の衰えから始まる"と言われますが、徐々に体重が減少し、息切れもどんどん強くなります。まさに悪循環です。
毎日少しずつでも歩く習慣を身につけ、きちんとバランスよい食事を心がける必要ガあります。
そうは言われても現実に苦しいんだから、というご意見もあるでしょう。実は、苦しさを緩和できる呼吸法があります。口すぼめ呼吸と腹式呼吸です(コラム参照)。病院では専門の呼吸療法士が教えてくれます。この正しい呼吸法を身につけ、毎日運動し、ちゃんと食事をする、これで状況はかなり改善するはずです。あ、もちろん禁煙は絶対です。
口すぼめ呼吸と腹式呼吸 口すぼめ呼吸は、息を吐く時に抵抗を与え、気道の内圧を高めることで気管支を広げ、肺に溜まっている空気を出しやすくするものです。練習するには全身をリラックスさせた後、口をすぼめながら30cm先のろうそくの炎を吹き消すようなイメージでゆっくりと吐き、次に鼻から空気を吸います。息を吐く時は吸う時の2倍の時間をかけます。 腹式呼吸は、横隔膜を使って体の力を無駄に使わず効率よく呼吸する方法です。練習するには、仰向けに寝て右手を胸に左手をお腹に乗せます。ゆっくり息を吐きます。この時、右手が動かず左手だけ沈むのを感じてください。次に鼻から深く吸って息をお腹に入れ、左手だけが持ち上がるようにしてください。右手が動いてはダメです。うまくできるようになったら、座った姿勢や立った姿勢で練習します。 これらを無意識にできるのが理想です。