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冷えに負けずに冬を乗り切る
縮んだ血管 戻るの遅い それが冷え性
血管の縮みは、女性の大敵「冷え」も、もたらします。体温を奪われないために血管が縮む以上、暖かい環境になったら血流が復活するはずなのに、なかなか戻らない、それが冷え性です。
血流が少ないと、末梢である手足の冷たさを感じ、物事に集中できなくなります。血行障害と同じで、肩こりや腰痛、頭痛につながることがあります。しもやけも起きやすくなります。体に栄養が行き渡らず疲れやすくなったりもします。
最も一般的な原因は、血管の伸び縮みを司っている自律神経の乱れです。卵と鶏のような関係として、自律神経が乱れていると、睡眠の質が悪くなり、これがまた自律神経に悪影響を与えます(06年9月号参照)。自律神経が乱れると胃腸の働きも悪くなって、その結果として免疫力も落ちます。免疫力が落ちれば、風邪などの感染症にもかかりやすくなります。
なおこのような血管の過緊張を和らげるには、入浴やアロマ・音楽・キャンドルライト・肌触りの良いゆったり目の部屋着など、五感に優しく心地よいものが役立ちます(コラム参照)。使い捨てカイロもバカになりません。
「冷え」には、ダイエットや食欲不振、胃腸機能の低下などで新陳代謝が低下し、発熱量そのものが少ないという場合もあります。食べ物のエネルギーの75%以上が熱に変えられていますので、食べる量、消化吸収する量が足りなければ冷えて当然です。ちなみに消化酵素が最もよく働くのは37℃近く。特に朝、起きたばかりで体温や代謝の低い時に、冷たいものを食べたり抜いたりすると、消化不良と冷えとが連鎖することになります。朝粥に代表されるような温かく消化の良い朝食をめざしましょう。
日常生活では熱エネルギーの約6割を筋肉が作り出しています。女性は男性に比べて筋肉量が約1割少なく発熱量も少ない分、男性より約1割多い皮下脂肪で覆って保温していますが、筋肉不足や運動不足は当然に冷えの原因となります。よく歩けば、血行がよくなり筋肉もつきます。
「冷え」は西洋医学的には疾患概念すらない一方で、漢方では「冷え症」と呼んで病気と考えます。処方もたくさんあります。
血行不良による冷えには、桂枝茯苓丸(ケイシブクリョウガン)や桃核承気湯(トウカクジョウキトウ)を用います。新陳代謝の低下による冷えには、当帰四逆加呉茱萸生姜湯(トウキシギャクカゴシュユショウキョウトウ)や真武湯(シンブトウ)、四物湯(シモツトウ)など。胃腸虚弱による体力低下に伴う冷えには、十全大補湯(ジュウゼンダイホトウ)や半夏白朮天麻湯(ハンゲビャクジュツテンマトウ)、人参養栄湯(ニンジンヨウエイトウ)が効きます。男性に多い隠れ冷え症の頻尿などには、八味地黄丸(ハチミジオウガン)を用います。
ただし「冷え」には、心臓の力が衰えている(08年3月号参照)場合や、貧血(06年3月号参照)の場合など、その根本疾患への治療が必要な場合もあります。さらに、膠原病や甲状腺機能低下症など別の重い病気が隠れていることもあります。急に冷えを感じるようになったり、なかなか改善しないようであれば、医師に相談してください。関節リウマチ(vol.42参照〓)や頭痛などは冷えると痛みが増すので、持病のある人は冷やさない努力も必要です。
腹巻きとゆるめの着衣 人間は、頭と胴体に生存上重要な器官が集まっています。特にお腹は肝臓があるためか、寒い時に血液が集まります。その分、手や足には血液が回らなくなります。靴下や手袋などで末端を温めても、肝心のお腹が冷えている状態では、なかなか温まらないというわけです。逆に、腹巻きをすると手足も温まります。冷たい飲食物が悪いのも同じ理屈ですし、キツイ下着や着衣も末梢への血流回復の妨げになります。