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在院日数短縮した回復期病院も-東京都脳卒中連携パス会議

 東京都内で脳卒中医療連携に関わる急性期から慢性期までの医療機関が集まる「脳卒中地域連携パス合同会議」が7月4日に開かれ、回復期リハビリテーション病棟を有する4病院がパスの影響について報告した。在院日数が約30日短縮したケースや、脳卒中ではないがパスに乗って送られた患者のケースなど、さまざまな報告があった。(熊田梨恵)

 この会議は、東京都で脳卒中地域連携クリティカルパスに関わる医療機関が集まる合同会議。東京都には現在10のパスがあるため、患者を受け入れる側の回復期や慢性期の医療機関は混乱し、業務が煩雑になっている。東京都は昨年度、パスを統一していく方針を固め、情報共有の場として「地域連携パス合同会議」の設置を決めた。違う種類のパスを運用する医療機関が一堂に会するという全国的にもめずらしい取り組みだ。2回目となった今回は、回復期リハビリテーション病棟や在宅との連携にスポットを当てた。
 
都庁会場.jpg 回復期リハビリテーション病棟を有する4病院から報告があり、発症から入院時までの期間が短縮されたことや、患者のADLが向上したなどの効果が挙げられた。また、脳卒中ではないがパスに乗って送られてきた患者がいたことや、連携病院からの紹介でもパスが使用されていないケースがあったことなども報告された。
  
それぞれの医療機関の報告をお伝えする。
  
  
■パス導入後、在院日数が約30日短縮
社団法人慈生会慈生会病院 リハビリ科 原島宏明氏
   
「回復期リハビリテーション病院からみた脳卒中地域連携」ということでお話をいただいた。当院は新宿から約4キロのあたり、新江古田駅から徒歩圏内。中野駅からバスで病院にお見舞に来られる方に便利な位置環境。当院は250床で、回復期リハビリテーション病棟122床、一般128床。リハビリスタッフは52人。2001年1月に回復期リハビリテーション病棟を立ち上げた。08年1月、「Metropolitan Stroke Network研究会」が発足する時に声をかけてもらい、入会した。同年4月に脳卒中地域連携パスを開始した。
 
回復期リハ病棟への入院までの流れ。導入前までは週に一回、入院の判定会議を開き、時間がかかる形だった。パス導入とともに、形を変えないといけないということになり、地域連携パスと診療情報提供書をいただければ、原則二日以内で判定の返事をするようにした。入院までの迅速なシステムづくりを開始した。
 
脳卒中地域連携パス導入によって回復期リハビリテーションがどう変化したかということ。パス導入前の07年10月1日から翌年3月31の間に回復期病棟に入った脳卒中患者62人。パス導入後の08年4月1日から翌年5月31日の期間に入った116人について比較した。年齢は導入前は71.6歳、導入後は73.7歳と、あまり変化はなかった。男女比についても、導入前は男性58%、女性42%、導入後は男性61%、女性39%。あまり変わらず、男性6に対し、女性4の割合。発症から入院までの期間は、導入前は42.7日で、導入後は38.9日と短縮が見られた。在棟日数については、導入前は99.4日、導入後は68.4日と著しく短縮が見られた。在宅復帰率は導入前は58%、導入後は61%という結果。
 
次に、入院時のBI(Barthel Index:機能的評価)の比較について。もう皆様ご存じだとは思うが、日常生活を表す指標なので、それを比較してみようと思った。導入前は平均的に来ているが、導入後は0-9点と、非常に重度の患者が増加したことが伺える。これは退院時のBI値の比較。退院時は、導入前は60点以上の方が多いが、際立っていることはない。導入後は、退院時の値が90-100点と、自立度が高い患者が増加した。また、BIの重傷者の改善度を検証してみた。改善度とは、入院時の値から退院時の値を引いたものだが、入院時点数が40点以下の患者を「重症」とした。導入前は改善が全くなかったが、導入後は、60点台と80点台に改善が見られた。改善度がマイナスのところに17%とあり、実数としては7名だが、この半数以上は脳血管疾患の再発患者なので日常生活指数とは関係ないというところ。
 
パス導入による変化としては、▽発症から入院までの日数が減少▽在棟日数が減少▽在宅復帰率が増加傾向▽入院時BIはパス導入後において重症患者の割合が増加▽退院時BIはパス導入後において90点以上の患者割合が増加―が挙げられる。
 
 その要因として、パス導入と入院判定が迅速化したことがある。これによって、▽急性期に近い病態の脳卒中患者が増加▽入院時BIにおいて重症患者の増大▽それらの重症患者における大幅な改善が認められた―。このため、在棟日数が減少し、在宅復帰率も増加傾向になった。
 
最後にまとめ。脳卒中パス導入により、▽迅速な患者の受け入れが可能になった▽回復期リハ病棟の適応患者が増大▽入院時は重症度が高いが、在宅復帰も増加傾向となった―。
 

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