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患者を支える4
特定公益増進法人 社団 日本糖尿病協会
*このコーナーでは、様々な疾患の患者団体や患者会がどのように患者さんを支えているのか、ご紹介していきます。
国内の糖尿病患者と予備群は07年現在で2210万人に上るとの衝撃的な推計が、厚生労働省の国民健康・栄養調査によって明らかになりました。10年前は1370万人でしたので実に1.6倍に増えているわけです。
糖尿病(06年1月号参照)には、生活習慣とは関係なく小児のころに発症する1型と、主に大人になってから発症する生活習慣病の2型とがあり、日本人の場合は9割以上を2型が占めます。2型だと軽いうちは痛くも痒くもないため、受診していない人が4割以上もいます。症状が出た時には手遅れであることも多く、失明したり透析が必要になったりして、それが医療費増大の大きな原因であると国家的な問題になっています。
早く受診し生活習慣を改善した場合には、健常者と何ら変わらない生活を送れるというのも2型糖尿病の特徴ですが、症状のない時に独りで継続するのは大変。同じ悩みを持つ者で集まって取り組んだらいいんでないかと、患者会ができたのは自然の流れです。それらが集まって全国組織になったのが、今回ご紹介する日本糖尿病協会。61年発足ですから間もなく50年になります。会員数約10万人、傘下に「友の会」が1700近くある巨大な組織です。
患者への情報発信以外に糖尿病治療の発展のための様々な活動をしています。たとえば、日本糖尿病学会の認定する専門医は全国に約3千人いますが、患者数に対して絶対数が少なすぎるので、専門外の医師にも協会に入会してもらい一定期間後に療養指導医となってもらう制度ができています。
また、糖尿病治療に欠かせないインスリンを患者自身で注射できるようになったのは、協会の提唱によるものです。さらに、各インスリンメーカーごと互換性のなかった注射針に共通規格が設けられたのも協会の活動の成果です。正しい知識を広めるための活動として、グリコヘモグロビン(HbA1C)という血糖値のデータの持つ意味を知ってもらうためのイベント等を行っています。
05年には、日本医師会、日本糖尿病学会と3者共同で日本糖尿病対策会議を設立しました。その後、日本歯科医師会も活動に加わりました。国家的危機を協力して打開していこうという狙いです。
日曜日に白熱の編集会議
さあ本部を訪ねてみましょう。東京・麹町の駅を出てすぐのビルの1フロア全部。常勤職員が約10人いるそうです。訪問したのは日曜日でしたが、ガラス張りの会議室の中で20人ほどが熱のこもった議論をしているのが見えます。
「機関誌『さかえ』の編集委員会です。皆さんボランティアなんですが熱心で、どちらが本業かというくらいの先生もいます」と説明してくれたのは、35歳で発症してから間もなく20年になるという専務理事の髙本誠介さん(事務局長も兼務)。兵庫県で貸しビル業を営んでおり、合間に全国を飛び回っているそうです。
「私たちとしては、患者に自分自身で学んでいただき、さらに一歩進んで社会に対して働きかけていただきたいとも思っています。医療者が指導はしてくれますけれど、患者が実行しなければ何の意味もない、それが糖尿病ですから。その意味で、むしろ会員になってない患者、それから一般の人への啓発が大事だと考えています。会員数10万人じゃなくて100万人でないとおかしいと言う方もいます」
こういう発言が出てくるのは、患者数は爆発的に増えているのに、患者会員の数が余り変わっていないから。背景にあるのは、患者気質の変化と個人情報保護の流れだといいます。
「情報はほしいけれど、集まって何かをしたくはない、と気質が変わってきました。そういうことに抵抗感のない人でも、医療スタッフから紹介されないと、なかなか友の会や協会の存在に気づきません。スタッフ側も紹介しづらくなっているようです」
「何といっても受診率を上げないと」と隣で言うのは、54歳で発症してやはり20年の藤井壽夫副理事長。現役時代は製薬会社の役員でした。
「私自身、現役時代はどちらかといえば仕事を優先してきたため肥満や運動不足がありました。退職後の教育入院を通じて糖尿病と付き合う基本原則は、あせらず あきらめず あなどらず、だと思いました」
2型糖尿病には、先進国の贅沢病(車の普及、高脂肪食の摂取)というイメージが付きまといますが、実は東南アジアで爆発的に患者が増えています。アジアで農耕を営んできた人々は飢餓に強い代わりに飽食には弱いようで、たまたま日本が先に豊かになっただけだったようです。
「アジア地区の状況改善にも日本が積極的に役割を果たさないといけないということで我々も活動しています。それなのに自分たちの足元がこんなことでは」と藤井副理事長の危機感は強いのでした。
(会の活動) 会員数は約10.5万人。うち7万人が糖尿病患者。残りは医療医療従事者および一般市民。直接、本部の会員になる方法と各地の「友の会」を通じて会員になる方法とがある。ふだんの活動は支部ごと独自に行われる。 本部では、機関誌『糖尿病ライフさかえ』を毎月発行。編集委員の8割が医療従事者、2割が患者。病気の基礎知識から食事のレシピ、運動の仕方など痒い所に手の届く中身になっている。ほか全国的なシンポジウムを年4回、日本糖尿病財団と共催のキャンペーンを年2回、年次総会を1回開催。04年には募金をして、モンゴルに糖尿病センターを建設・寄贈した。 同会の連絡先Tel 03-3514-1721