情報はすべてロハス・メディカル本誌発行時点のものを掲載しております。特に監修者の肩書などは、変わっている可能性があります。
心の病 がんばらないでください
ストレスは大きな要因です。
現時点で、なぜ心の病が起こるのか、完全に解明されているわけではありません。とはいえ、さまざまな要因を挙げることはできます。先にご紹介したような脳自体の病気・怪我のほか、生活習慣、生育環境、本人の気質・性格、精神的・肉体的なストレス、遺伝的素因、酒・タバコ・薬物などの化学物質、身体の病気、そして老化などです。これらは一つだけで心の病を誘引するわけではなく、通常、いくつかが複雑に絡みあって病に至るようです。
なかでも多いのが、対人関係や仕事上でのストレスが引き金になっているケース。入学・卒業や就職・転職・退職・昇進、結婚・離婚、引越し、近親者の死など、人生の転機といわれる環境変化が原因となることもあります。原因ストレスを軽減させることで症状は軽減するとも言われますが、ストレスを完全に取り除いても症状が改善しないこともめずらしくありません。
また、素因の多くがあっても、家族や周囲の支援があると、心の病を発症しないで済むことも少なくないようです。
「これは心の病」と思ったら
心の病のサイン・症状は人によりますが、不調が長期にわたり、仕事や学業、家庭生活に支障があるなら、医療機関での適切な治療が必要です。
その際、どこの診療科を受診すべきかですが、心の病は、「精神科」が専門としています。なんとなく似た響きの診療科に「心療内科」がありますが、こちらは心身症(発症や経過に心理的・社会的な要因が関与したうえで、胃、心臓、皮膚等に現れる体の疾患)を治療するところ。体に症状が出ていても心の病によるものなら、精神科を受診します。ちなみにもうひとつ、「神経内科」は、脳神経や脳血管の障害を扱っています。
さて、心の病の治療法としては、「薬物療法」を中心に「精神療法」を併用していくのが主流です。薬物療法は、「向精神薬」という薬を用いて脳の中枢神経に直接働きかけ、精神症状を改善しようとするものです。精神療法では、医師や臨床心理士などが、患者との会話を通じ、心理テストなども必要に応じて併用しながら、発症した真の原因、背景等を突き止めることで、解決法を見出していきます。
治療にあたって重要なのは、医師と患者・家族との信頼関係です。すぐに改善がみられないからと薬の服用を勝手に中止したり、医師が信頼できないと思い込んで次々と他を受診する「ドクターショッピング」をしていては、治療も進みません。心の病は、よくなったり悪くなったりを繰り返しながら、たいていは極めてゆっくり回復します。医師の指示に従って根気よく、が大切です。
最後に、心の病の治療には、家族の役割が大きいのも事実です。病気の自覚がなかったり、認めたくもない本人の抵抗感をなくすため、最初は内科等を受診し、適切な病院を紹介してもらうのもよいでしょう。日頃できることとしては、本人の話を聞き、知識をつけて偏見をなくし、生活習慣の見直しに協力することです。焦りは禁物。諦めず、見捨てず、辛抱強く支えることが必要です。共倒れにならぬよう、家族がストレスを溜めすぎないことも大切です。それには、患者に気を遣いすぎず普通に接し、つかず離れず、助けが必要なときにそっと手を差し伸べる、というのがよいでしょう。じっくり回復を待ってあげてください。