食べすぎ なぜいけないのか。
内臓脂肪とLDL-Cの悪行
まず、カロリーオーバーからくる内臓脂肪の増加が疾病リスクを増大させることについて、詳しく見ていきたいと思います。
皮下脂肪よりも、いわゆる「隠れ肥満」の正体である内臓脂肪がやっかいなのは前項で説明した通りです。内臓脂肪型肥満の典型は、BMIが25以上(コラム参照)で、お腹が出ている(ウエストが男性85cm以上、女性90cm以上)にも関わらず、皮下脂肪をたっぷりつかめないような人です。
具体的に、糖尿病の有病率に関して、BMIが20以上24未満の人と30以上の人を比較した調査結果があります。30歳代では後者は前者の7.4倍の相対リスク、絶対リスクでも10.3%増という結果でした。さらに70歳代では、絶対リスクが36.7%増 となりました。
また、肥満の人が高血圧症になる確率は、肥満でない人の2~3倍 とされますが、とくに40歳代の男性約600人を対象とした調査では、皮下脂肪よりも内臓脂肪の関与が明らかとなっています 。
のみならず、内臓脂肪が増えると血中の中性脂肪が増え、善玉コレステロール(HDL-C)が減少、脂質異常症を誘発します。なお、この脂質異常症の原因としては、もう一つLDL-C値の上昇から引き起こされるケースもあり、深刻な影響を及ぼします。
そして何より問題なのは、こうした糖尿病、高血圧、そして脂質異常症といった要素が重なれば重なるほど、動脈硬化のリスクが高まること。血管の膜がしだいに厚く硬く、もろくなり、血液が流れにくくなったり血栓ができて血管をふさいだり、というトラブルの頻度が上昇。脳の血管に起これば脳梗塞、心臓の血管に起これば心筋梗塞、どちらも高い割合で死に直結します。
実は統計上では、単なる「肥満」と脳梗塞・心筋梗塞など動脈硬化に起因する疾病の直接的関係は、はっきり数字に現れてきません。ところが、正常体重であっても、内臓脂肪値やLDL-C値が高い場合には、脳梗塞および心筋梗塞のリスクを高めることが明らかになっています。逆に例えば、高LDL-Cの脂質異常症患者に対して投薬により数値を18%低下させたところ、心疾患が33%減少した 、という報告もあります。
特に近年、総摂取カロリーに占める脂質摂取量の割合が、国民平均で約25%になっています。若年層ほど割合は大きく10代前後では30%に迫る勢いです。なかでも肉や乳製品等の動物性脂肪に多く含まれる飽和脂肪酸は、LDL-Cを増加させる物質として知られます。ですから、たとえカロリーオーバーでなくても、また同じ油脂類を摂るにしても、動物性脂肪の摂りすぎには注意が必要でしょう。
BMIって何? 現在、肥満の判定は、身長と体重から計算されるBMI(Body Mass Index、肥満指数)という数値で行われています。 BMI指数=体重(kg) ÷ {身長(m) X 身長(m)} 日本肥満学会の判定基準では、統計的にもっとも病気にかかりにくいBMI22を標準とし、25以上を肥満としています。これは、BMIが22の場合に、高血圧、脂質異常症、糖尿病等の有病率が最も低くなることが分かってきたため。一方、25以上になるとそうした病気に非常にかかりやすくなります。