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検査の現場から12

病理診断は、がん診療における確定診断です

東京大学助教授(病理部副部長)
福嶋 敬宜

 病理診断は、患者さんの治療方針を決定することや治療を評価するために、主に患部から採取された組織の一部を顕微鏡で調べて、病変の種類やがんの性質などを診断するものです。

 人間の体は、表面に(上皮)細胞がきちっと並んでおり、その間に血管、骨、筋肉や線維、脂肪組織などが詰まってできています。表面というのは皮膚だけではなく、口腔粘膜や胃、膀胱粘膜の表面なども含みます。

 このような私たちの体の構成する細胞や組織は、体に何らかの異常を来すと、形態(細胞の形や並びなど)が変わったり、普通では見られない種類の細胞が増えてきたりします。その細胞の種類や形の変化を顕微鏡で捉えて病気の診断を行うのが病理診断なのです。

 例えば乳房のしこり(腫瘤)を理由に受診された患者さんがいるとします。病院では触診のあと、マンモグラフィーやエコーなどの検査をされるのが普通で、これらによって、ある程度の診断予測ができます。しかし、最終的な診断(良性病変か悪性か?)となると、病理診断が欠かせません。

 読者の皆様にも、検診などで受けた大腸や胃の内視鏡検査で、ポリープや粘膜の荒れが見つかり、「組織を採って調べます」と言われた方もいるでしょう。これは「病理診断を行うために組織を採取して詳しく検査します」という意味であり、これによって、炎症だけなのか、切除の必要な腫瘍であるのか、などが分かります。

 病理診断は様々な病変を対象としますが、特にがん診療においては、その最終診断方法として確立されています。

 病理診断を行うためには、顕微鏡で細胞の形の変化を捉える能力と知識が必要ですが、それに加えて患者さんの症状や放射線画像所見などを理解して、総合的に病変や疾患を理解する能力も不可欠です。このため、病理診断は、特別なトレーニングを受けて認定を受けた医師(病理専門医)が行っています。

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