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情報はすべてロハス・メディカル本誌発行時点のものを掲載しております。特に監修者の肩書などは、変わっている可能性があります。

ストップ!! 医療崩壊2

21-2-1.JPG前号で日本の医療制度が患者にとってあまり嬉しくない形で変わりかけていることを説明しました。
今号では、いったいどうしたら良いのか考えましょう。

監修/土屋了介 国立がんセンター中央病院院長
    和田仁孝 早稲田大学大学院教授

需要減らすか、供給増やすか

 前号のおさらいから。全国的に施設の集約化・高度化が始まっています。地域内の需要を満たす医療供給があるならば、集約化によって、少々不便になる人はいるかもしれないけれど、イザという時により安心(もちろん搬送手段は必要です)になるし、医療者側もハッピーです。でもはじめから供給不足の場合、集約化しても問題は解決しませんし、現時点で少なくとも一部地域の一部診療科では、供給が足りていません。
 ここから今回の議論です。供給不足が局所的、一時的なら、大騒ぎする必要はないかもしれません。
 しかし現在、医療供給が不足している所では、医療者の勤務がとてつもなく過酷なうえに、状況改善の見通しも立たないことが多く、体調を崩したり気力を失ったりして、さらに医療者が減る(=供給が減る)傾向にあります。
 結果として、あおりを受けた周囲の地域や他の診療科でも供給不足が起き、ドミノ倒しのように医療崩壊が広がる可能性があります。
 供給不足を局所的・一時的にとどめるために、どのようにしたらよいでしょう。
 一般に、需要を満たすだけの供給がない場合、解決策は需要を減らすか、供給を増やすかです。
 現行の医療制度では、どこの医療機関へ行くか選ぶのは患者側です。医療機関が、診療時間内に訪れた患者を断ることもできません(次項コラム参照)。言葉を換えると、医療需要を強制的に減らすことは想定されていないのです。また国民皆保険制度の下、医療行為の対価はほぼ全国共通一定ですから、一部地域だけ価格を上げて需要を抑制することもできません。
 要するに、患者側が不要な受診を控える以外、需要を減らす方法はないわけです。といって、受診が不要かどうか患者に判断できるわけもないので、現実的なのは、突発的な尋常でない苦痛(この場合は救急車)のとき以外、まず診療所へ行って、必要があると判断された場合のみ紹介状をもらって病院へ行くよう心がけるくらいでしょうか。
 特に近年、診療所すら存在しないような地域が増えています。そうした地域から「どうせ他地域へ行くのだから」と病院を受診すると、病院にとって逆に需要が増えてしまうことになります。心理的抵抗があるとは思いますが、他地域でも診療所へ、です。
 厚生労働省の「医師の需給に関する検討会報告書」(06年7月、以下「厚労省報告書」と省略)も、「病院が入院機能に特化する(編集部注=外来診療を行わない)ことにより需要を軽減することが可能である」と述べています。
 ただしどう考えても、需要抑制だけでは済みません。足りない地域・診療科について、医師など医療従事者を増やす必要があります。また、既にギリギリの陣容になっている所では、これ以上減らさないことが必要です。次項では、これについてどうすればよいのか考えてみます。

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