大野病院事件の再検証はしない―産婦人科医会、医療問題弁護団要望書への見解
日本産婦人科医会(寺尾俊彦会長)は9日に開いた記者懇談会で、医療問題弁護団(鈴木利広代表)から提出された「福島県立大野病院事件」に関する事故調査委員会の設置などを求める要望書に対し、「個々の事例についての再度の検証はなかなか難しい」として個別検証を行う予定はないとの見解を示した。国内で発生した妊産婦死亡の事例についてシステム的に検証を行っていくなど「トータルとしての医療の底上げ」で再発防止を図りたいとした。(熊田梨恵)
2004年に福島県立大野病院で妊婦が帝王切開手術中に死亡し、業務上過失致死と医師法違反の容疑で逮捕されていた執刀医の無罪が08年に確定した「福島県立大野病院事件」の裁判について、医療問題弁護団は先月末に、同会と日本産科婦人科学会、日本麻酔科学会に対して事故調査委員会を設置し、原因究明や再発防止を求める要望書を出していた。
同会が産婦人科偶発事例報告事業の報告を行った記者懇談会で質問に応じた。やり取りは次の通り。
[ロハス]
先日医療問題弁護団から、大野病院事件に関して事故調査委員会を設置してほしいという要望書が医会宛にも出されていたが、それについて今後予定を考えているか。
[石渡勇常務理事]
その問題は、医会と学会と放射線学会(ママ、宛先は日本麻酔科学会)に要望書として。結局刑事裁判で結審している事例なんですけども。いわゆる個々の分析については刑事事件の分析の中からでは不十分であると。したがって、その妊婦死亡全般にわたって、たとえば妊娠中の事、それから手術前のこと、手術の事、手術の後の事。いくつか項目を立てて、それについてもう一度医学的に検証してほしいという、そういう要望が実際上がってきているわけなんですね。
個々の事例について検証するといういうことは非常に難しいです。データがまずないです。裁判の中ではデータが出るかもしれないけども、一般の事故調査といいいますか、そういうのはデータが上がってこないという難しさがありますし。それから確かに加藤(克彦)先生は学会の会員でありますけども。助産師さんでありますとか、協働された麻酔の先生たちは医会の会員ではございませんし。そういうことも(この部分聞きとれず)。