誌面アーカイブ

情報はすべてロハス・メディカル本誌発行時点のものを掲載しております。特に監修者の肩書などは、変わっている可能性があります。

意外と厄介 慢性頭痛

32-1-1.JPG頭痛の経験ありますよね。
あの頭が痛いっていうのは、一体何なんでしょう。
考え始めると、これがなかなか複雑です。

監修/北川泰久 東海大学八王子病院院長
    小鷹昌明 獨協医科大学講師

痛いってどういうこと?

 痛いのが好きという人は、あまりいないと思います。では、このような不快な感覚が何のためにあるか、考えたことありますか。
 世の中には、ちゃんと考えている人がいます。そして、その人たちが定義したところによれば、「痛み」とは、・体の組織が外から傷つけられた時、・体の中が病的状態の時、・その時点では傷がついていなくてもその状態が長く続くと傷がつくと予想される時に生じる感覚です。
 え、何を言っているか分からない? すみません。
 要するに、体に悪い異変が起きそうな時に、その状態から一刻も早く逃げ出せるように体が自動的に発してくれる警告、それが「痛み」なのです。だから痛みを感じることができない人は、病気として扱われます。
 もう少し小さなレベルで見ると、痛みを感じる神経細胞の末端の受容体に、痛みを感じさせる物質が取りつくことによって神経が興奮し脳に刺激を伝えて、痛みとなります。痛みを感じさせる物質とは、細胞が壊れた時に出てくるカリウムイオンだったり、炎症を起こした細胞が出すプロスタグランジン、ブラディキニン、セロトニン、ヒスタミンといったものだったりします。これ実は、たとえ組織が何ともなくても物質が痛覚神経末端に取りつけば痛みを感じるということであり、極端な話、どんな形であれ痛覚神経が興奮したら痛みを感じるということです。
 逆に、神経末端の受容体に取りつくことにより神経の興奮を抑えて、痛みを取り除く物質もあります。これは、モルヒネなどのいわゆる麻薬(医療用に用いられる場合オピオイドと呼ばれます)です。
 本来の意味の警告としてだけ働くのであれば、「痛み」はそんなに毛嫌いすべき存在ではなく、逆に体を守るためになくてはならない反応なのです。
 しかし実は、「痛み」を感じる神経系は、多くの場合、一度痛みがあると、しばらくの間は感じ方が過敏になるという特徴があります。つまりこの手の痛みは、慣れるというものではなく、痛みを感じれば感じるほど、どんどん痛くなるということです。
 この悪循環が止まらずに、ある閾値を超えると、特に原因もないのに痛むということになります。火事でもないのに鳴り続ける火災報知機のようなもので、これがいわゆる慢性痛です。考えてみると恐ろしいことですね。
 「痛み」があるのに、ニコニコ笑って人生を前向きに生きるというのは、かなり難しい話です。「痛み」だけで死ぬことはありませんけれど、社会とうまくやっていくには、大きな障害となります。
 だから、痛みがあったら我慢しないで、速やかに鎮めることが大切です。今回のテーマである頭痛についても、全く同じことが言えます。

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