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原因不明 もしかしてホルモンの病気

分泌量が多すぎるとき。

 ホルモンが分泌され過ぎてしまう原因で最も多いのは、内分泌腺にできた腫瘍が、良性・悪性問わず、過剰なホルモンを分泌するケースです。あるいは、内分泌と本来は無関係な組織(肺など)にできた腫瘍が過剰に分泌することもあります。また炎症によって内分泌腺が破壊されて多量に流れ出したり、自己免疫異常により抗体が内分泌腺を刺激し続けて分泌過剰になることもあります。
 免疫異常の典型例が「バセドウ病」。自分の体が自分の臓器に対してアレルギー反応を起こす自己免疫疾患と考えられています。血液中の異常なタンパク質(抗体)が甲状腺を刺激して甲状腺ホルモンを過剰に分泌させるものです。このホルモンはもともと全身の細胞の新陳代謝を活発にする働きを持っているのですが、バセドウ病では甲状腺が腫れ、脈も速くなります。発汗、手のふるえ、動悸のほか、眼球が突き出て、食欲があるのに痩せてくることも。落ち着きがなくなったり、イライラしたり、精神的にも不安定になるようです。

成長ホルモンも出すぎはダメ

 また、子供たちになくてはならない成長ホルモンも、過ぎたるは及ばざるが如し。成長ホルモンはその名のとおり、骨格、筋肉、その他多くの器官の成長を促進します。ところが過剰に作られると、これらすべての組織で異常に活発な成長を引き起こすことに。原因はたいてい、下垂体にできた良性の腫瘍です。
 思春期前の子どもの場合は「巨人症」となり、身長が異常に伸びて手足も長くなります。思春期の遅れや生殖器の発育不良も見られます。しかしそれにも増して多いのは、骨の成長が止まって長年が経過した30・40歳代での発症。「先端巨大症」となって、骨が伸びるよりむしろ変形します。手足が肥大し、あごが発達して突き出て、声は太くかすれます。関節の痛みがあり、後に変形性関節炎の恐れも。ただし変化はゆっくりで、なかなか気づきません。
 その他、巨人症と先端巨大症どちらも、脳が圧迫されて頭痛を起こしたり、視野が狭まったり、はたまた高血圧、心臓肥大や心不全、糖尿病など、深刻な症状に。先端巨大症は「治療しないと余命が短くなる」とさえ言われます。
 さて治療ですが、血液検査で診断が確定した後、もし原因となっている腫瘍等が見つかれば、手術で取り除くことを検討します。放射線療法を組み合わせたり、手術以外の方法で腫瘍を死滅あるいは小さくする方法もあります。
 薬物療法も行われますが、症状を取り除くか大幅に緩和することしかできません。いずれにしても放置すれば病気の影響は全身に及びますので、一刻も早く治療を始めるに越したことはないのです。

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