誌面アーカイブ

情報はすべてロハス・メディカル本誌発行時点のものを掲載しております。特に監修者の肩書などは、変わっている可能性があります。

患者自ら立つ6

tatumamiya.JPGC型肝炎ほか 間宮清さん(46歳)
*このコーナーでは、日本慢性疾患セルフマネジメント協会が行っているワークショップ(WS)を受講した患者さんたちの体験談をご紹介しています。同協会の連絡先は、03-5449-2317 サリドマイド被害者の間宮清さんは、12年前にC型肝炎感染が分かりました。3回のつらいインターフェロン治療でもウイルスは消えず、しかし間で受けたセルフマネジメントプログラムが生きました。

 間宮さんは、配管工の父、主婦の母の二男として63年2月、横浜市で生まれました。両手腕の短いサリドマイド被害児でした。生まれ月から逆算すると、サリドマイドへの警告がドイツの研究者から発せられた時、厚生省がヨーロッパの国々と同様に販売禁止と回収の措置を取っていれば被害に遭わずに済んだはずでした。日本で最初の行政の不作為による薬害被害者の1人ということになります。
 しかしながら生来の性格か、世を恨むこともなく朗らかに育ちます。両親が頑張って送り込んでくれた公立普通学級の小中高を経て美術大学に進み、卒業後は銀座のインテリア関連会社へ。そこで知り合った1つ歳下の女性と結婚します。5年勤めて独立、横浜に輸入雑貨を扱う会社を設立しました。それほど羽振りが良かったわけではありませんが、寒冷じんましんの体質があって痒くて仕方ないのを除くと、特に健康にも問題はない順調な日々と思っていました。
 ところが97年、長男に恵まれるのと前後して、病原性大腸菌O28の食中毒に遭い状況が一変しました。体中の水分が出て行ってしまいそうな激しい嘔吐と下痢。10日ほど家の近所の病院に入院し、ようやく落ち着いたかなと思った頃、「C型肝炎に感染している。治療した方がいいよ」と告げられたのです。
 C型肝炎も薬害で知られる疾病で、放置すると肝硬変や肝癌へと移行し命にかかわります(07年2月号参照)。間宮さんは2歳の時、サリドマイドに起因する心奇形の手術を大学病院で受け、輸血もされていました。思い当たる原因はそれしかありません。
 当時の国はC型肝炎問題に取り組んでいませんでした。間宮さんも感染に全く気づいておらず、しかも肝機能が相当悪くなっていたので、ある意味O28感染が命を救いました
 しばらくして、間宮さんはインターフェロン治療を受けました。治療の間は副作用が激しく、毎日へたり込むような状態。遊びたい盛りの長男の相手もできず、家族に申し訳ないなあと思っていたそうです。それほどの思いをしたのにウイルスは消えません。
 そんな時、サリドマイド被害者の支援活動などを行う「いしずえ」(サリドマイド福祉センター)の事務局長が事務所で倒れて亡くなるというショッキングな出来事がありました。何か運命的なものを感じ、「自分が役に立てるなら」と99年、会社を閉じて後任の事務局長に就きました。
 
仕事に役立つかな スケベ心で受講

 事務局長として日々忙しく過ごしていた05年、HIV患者の支援をしている「はばたき福祉事業団」の柿沼章子事務局長から、セルフマネジメントのWSに誘われます。6週間連続というハードルの高さもあり、「今さら勉強するのはイヤ」と断りましたが、「勉強じゃないのよ」と言われ、「事務局長の仕事に役に立つかも、というスケベ心が湧いて」受講することにしました。
 くしくも、1月号に登場した武田飛呂城さんがリーダーとして初めて開いたWSでした。間宮さんは初日から衝撃を受けます。やりたいことをアクションプランにして、と言われ、「自分は何をやりたいのだろうと考え込んでしまいました。とても大事なことなのに、普段はまったく考えず漫然と過ごしているなと気づかされた」のです。他の参加者との会話も楽しく、どんどん引き込まれていったと言います。
 6回終えてみると、教わった中には、問題解決の合理的な考え方や手法、過度に自己主張しなくとも自分の気持ちを伝えられるコミュニケーションの方法など、目から鱗の落ちるようなものがたくさんありました。
 受講後に、3回目のインターフェロン治療がありました。やはりウイルスは消えませんでしたが、感情面のコントロールがずいぶんと楽になったそうです。寒冷じんましんを搔きむしることもなくなりました。
 間宮さんは、他にもインターフェロン治療の副作用か緑内障を患っており毎晩の点眼が欠かせません。でも「比較的コントロールできてるんじゃないですかね。なってしまったものは仕方ないので、くよくよせず、うまく付き合っていくだけですよ」。最後まで笑みを絶やしませんでした。

ワンポイントアドバイス(近藤房恵・米サミュエルメリット大学准教授)  病気のことでいろいろ言われるのが嫌で、つい感情的に怒鳴ったり、「私の気持ちが分かるわけない」と自分を閉じてしまったり、相手に遠慮して「いいえ」と言えなかったりと、病気を抱えているといろいろなコミュニケーションの問題に直面します。  ワークショップでは、怒りや不満のような難しい感情や心配事を相手にうまく伝えるために『私メッセージ』を学びます。  『私メッセージ』は「どうしてあなたな......」と「あなた」を主語にして相手を責めるのではなく、「私は......と思います」と、自分の気持ちを伝えるやり方です。練習が必要ですが、この技法をうまく使えるようになると、人間関係が円滑になっていきます。
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