誌面アーカイブ

情報はすべてロハス・メディカル本誌発行時点のものを掲載しております。特に監修者の肩書などは、変わっている可能性があります。

患者自ら立つ1・患者を支える1

血友病ほか 武田飛呂城さん(30歳)

日本慢性疾患セルフマネジメント協会

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 あなたは現在の医療機関に満足していますか? 満たされないものを感じているとしたら、何が不満なのか、ちょっと考えてみましょう。ひょっとすると医療機関では得られるはずのない性格のものを無意識に求めてはいませんか。餅は餅屋です。

takedahiroki2.JPG 病気は、その性格によって大きく2つに分けられます。短期的に闘病すれば元のような健康体に戻れるものと、一たび発症したら完全に健康体に戻ることはなく付き合い続けなければならないものと。前者の代表例はインフルエンザなど一部の感染症で、昔はそうしたもので命を落とす人が少なくなかったわけですが、医療の発達した現代社会では、患者に後者の占める割合が圧倒的に多くなっています。後者を「慢性疾患」と呼びます。

患者自ら教え教わる

 短期的に闘病して治るものなら、患者は概ね医療者の用意したメニューに従って動けばよいことになります。しかし慢性疾患は話が別です。闘病だけを目的に生きている人はいません。人生の中でやりたいことと、病気との間に折り合いをつける必要があります。
 その際、医療者が頼りになる存在であることは確かです。しかし慢性疾患の場合は、医療者の指示を素直に守りづらい面があるようです。病気との付き合いは日常ですが、医療者が四六時中サポートしてくれるわけではありません。そして患者には、医療者が健康で病の苦しみを知らない人に映り、そんな人から命令されているような気もするからです。
 指示を守らなければいけないことは分かっているのに守れない。その結果、自分の健康状態も悪くなる。これは大変なストレスで、自分がイヤになってますますやる気になれないという悪循環を起こします。
 そんな患者たちに反対の良循環を起こしてもらうべく、「病気とうまく付き合い、自分らしく日常生活を送ることができるよう」支援する活動をしているのが、これからご紹介する日本慢性疾患セルフマネジメント協会。05年10月に発足したばかりの団体ですが、科学的裏付けのある体系的なプログラム(方法論)に則った活動(コラム参照)をしている点が非常にユニークです。
 セルフマネジメントと横文字が入っていることでも分かるように、その方法論は米スタンフォード大で開発されたもので、英国のNHS(日本の健康保険にあたる)でも導入されているなど、すでに世界15カ国以上で導入されています。
 ①自分の病気についてコントロールできる範囲を知り②自分の理想の生活に近づくための方法を手に入れ③必要な知識を医療者などの専門職に求めながら④意欲的に自分自身で問題解決できるようにする、ことを目標にしています。しかも、その取り組みを患者自身がコーディネートしています。
 早速訪ねてみましょう。同協会の事務所は、品川駅近くのビルの一室にあります。ドアを開けると、にこやかに迎えてくれるのが、事務局長代行の武田飛呂城さんと千脇美穂子さん。2人とも慢性疾患の患者で、ワークショップ(WS。コラム参照)を経験し、現在では千脇さんが「ワークショップを開ける「リーダー」、武田さんがリーダー養成をできる「マスタートレーナー」という立場にあります。
 この武田さん、聴けば万人が驚くような壮絶な体験をしています。それについて後でご紹介しますが、個人の資質もあるにせよ、これだけにこやかに活躍している姿を見せられては、プログラムの優れていることを認めざるを得ません。でも、その割にこのプログラムが知られていないのには、それなりの理由があります。
 「6週連続で週末にワークショップを開かないといけないから大変なんです。参加する人のことを考えると駅のそばでやりたい。でも予算は少ないから借りられるとしたら公共施設。なかなか6週連続で取れません。それから、交通費とか個人の都合とか考えると、リーダーの住む所からあまりに離れた場所で開くのは非現実的です」と武田さん。
 予算の不足は様々な助成にチャレンジして補おうとしていますが、たとえ予算が潤沢にあったとしても、じわじわとWSの開催地域を広げていくしかないのだそうです。

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