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情報はすべてロハス・メディカル本誌発行時点のものを掲載しております。特に監修者の肩書などは、変わっている可能性があります。

がん 治療の水先案内人 病理医


だから少ない その中で質も模索

 医療の中でも、病理というのは特殊な専門性の高い分野ですから、外部の人間が質を評価するのは困難です。結局は専門家どうしでチェックし合うしかないわけで、質の担保をするうえでも、まずその絶対数を増やす必要があるということになります。
 なぜ病理医は少ないのでしょうか。
 まず真っ先に挙げられるのが、病理医という職種・職掌に対する社会的認知度の低さです。医学部に入るまで、ほとんどの学生は存在を知りません。当然のことながら「病理医になるんだ」と言って医学部に入ってくる人もいません。医学部教育の中で志望者を育てる必要があります。
 しかし、大学教育では病理学が基礎医学に位置づけられてきたため低学年のうちに履修が終わってしまいます。志望を真剣に考え始める高学年では臨床医学のカリキュラムが増えますので、医学生も自然と臨床医をめざして勉強することになります。
 そんな医学生にやり甲斐を伝えられるとしたら病院の現役病理医ということになりますが、なかなか接点がありません。医師免許を取得後に最終的な志望先を決めるまでの2年間を過ごす臨床研修でも、病理は必修科でなく、接点の少ないままです。
 臨床の最前線である病院の中でも、診療報酬上は病理が検査の一部門として扱われてきたことも影響して、存在感を発揮できずにいました。常勤病理医が担当しても、外注しても、請求できるのは同じ「病理組織標本作製料」(現在は880点)という時代が長く続いたのです。
 ようやく06年4月に、病理医が診断した場合には病理診断料を患者1人1ヵ月あたり410点請求できることになりました。さらに08年4月からは、「病理診断科」を標榜できるようになり、また病理診断料が急性期入院の際の包括払い対象から外れました。
 病院経営者から見て、常勤病理医がいれば、それを患者に宣伝できるし、収入も増えるという構造になったわけです。この効果は、今後徐々に現れてくるのでないかと期待されています。

「尊敬」で質確保

 病理医の数がすぐ劇的に増えることは望めそうもないので、現実問題としては現有戦力でどうやって質を担保するかという話になります。
 現在、病院の機能評価の中に病理部門に関する外形的基準があるにはあります。また学会としてISOのような手順管理の仕組みも導入が進んでいます。しかし診断が合っているかどうか精度管理する仕組みはありません。施設ごとに管理する必要があり、それには前述のように複数の病理医が常勤することが近道と考えられています。
 また病理医は全身の病態を診断しなければなりませんが、難解なケースもあります。そういった場合でもきちんと診断できるよう、その分野に関する実力者の所へ標本や画像を送って意見を聴くコンサルテーションが行なわれています。全体の人数の少ない分、誰がどの分野を得意としているか、お互いに知っています。個人のツテで行われる場合もありますし、学会の用意した公式の仕組みで行われることもあります。実力を認められ頼まれる構図なので、特定の専門家に集中する欠点があり、またコンサルテーションされる側がほぼ無償奉仕になってしまう点は問題として残っています。
 以上、駆け足で病理医という存在と、その抱える課題をご紹介してきました。病理医の存在と役割、そして圧倒的に足りないことを認識していただけると幸いです。

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