誌面アーカイブ

情報はすべてロハス・メディカル本誌発行時点のものを掲載しております。特に監修者の肩書などは、変わっている可能性があります。

ウイルス感染症 新型インフルエンザ 基礎のおさらいもう一度

かかってしまったら合併症にご用心

 基礎疾患のある人は既に主治医も存在しているはずですので、もしかかってしまったらどうしたらよいのか、主治医にあらかじめ確認しておきましょう。
 基礎疾患を持たない人の場合、インフルエンザは高熱や痛みが不快ではあっても、命にかかわるようなことは滅多にありません。
 かかってしまったとしても、静かに寝ているのが一番です。ただし水分補給だけは忘れずに。免疫によるウイルス撃退に水分は必須です。特に高齢者の場合、喉の渇きを感じるセンサーが鈍くなっているので、脱水症状になってしまって、別の合併症に至る危険があります。汗を大量にかいたようなら、電解質も同時に補給できるスポーツドリンクを飲むとよいでしょう。
 本音を言えば、早く病院へ行って抗インフルエンザ薬(コラム参照)をもらいたいところだと思いますが、軽症の人が病院へ押し寄せると医療者が対応しきれなくなり、重症者や他の重い疾病の方々の命が危険にさらされます。また、免疫力の落ちた人たちに感染させてしまう危険も高まります。自制しましょう(コラム参照)。
 ただし、もし息切れ、呼吸困難、チアノーゼ、意識障害、けいれんなどの症状が出てきた時は、後に述べる危険な合併症を起こしている可能性がありますので、躊躇せず救急車を呼ぶことが大切です。
 インフルエンザの合併症で、最もよくみられるのは肺炎です。インフルエンザウイルス自体が肺に広がるものと、肺炎球菌などインフルエンザとは関係のない細菌が二次的に感染して起きる細菌性肺炎があります。
 前者には、冒頭の項で説明したサイトカインストームが関与しているとの説があり、事前に予測したり予防したりすることはできないので対症療法になります。後者の場合、もし事前に肺炎球菌ワクチンなどを接種しておくことが可能ならば、接種し備えておくとよいでしょう。
 子供の場合は、脳症を起こすことがあります。命にかかわります。発熱で朦朧としているのか見分けが難しいのですが、意識障害を疑う兆候があったら、速やかに医療機関を受診してください。

タミフルとリレンザ インフルエンザウイルスが感染した細胞から外へ離れる際に必須の酵素『ノイラミニダーゼ』の働きをブロックすることで、感染していない細胞へのウイルスの移動を阻止する薬です。免疫がウイルスの移動を阻止しきれていない段階で服用した場合には、症状の悪化を防ぐことになります。免疫とウイルスとの攻防戦が峠を越えた後に服用してもあまり意味はありません。このため、服用するのは熱が出てから2日以内と言われているわけです。  重症化してしまった時に治療効果があるのかや、予防投与に効果があるのかは、ハッキリしていません。検査キットの精度の問題(コラム参照)もあって、新型インフルエンザでない人にも相当処方されるとみられます。耐性ウイルスが蔓延するのでないかとか、本当に必要な時には足りないのでないかといった心配もされていますので、医師が不要という時に無理やり処方させるのはやめましょう。
陰性証明 絶対にやめて  迅速検査キットでは、新型インフルエンザに感染していても陰性に出てしまう確率が相当あります。米国では、1割しか見つけられなかったという論文すら出ているほどで、陰性だからといって感染していないとは全く言えません。  ただでさえ医療機関は忙しくなっていて、本当に医療の必要な患者の命にかかわりますので、陰性証明のために検査を求めるのは絶対にやめてください。


症状がある人のエチケット
 外出は極力しない。どうしても外出しなければならない場合は必ずマスクを着用。以下の咳エチケットも厳守しましょう。
 咳をする場合は、他人のいない方向を向いて、口と鼻をティッシュで覆う。そのティッシュは、他の人が触らないようゴミ箱へ。ティッシュなどがないときは、手ではなく腕で鼻と口を押さえます。つばや鼻水が手についたら、石けんで丁寧に洗い流します。

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