新型インフル 軽症ならタミフル不要
『持病のない人は受診を控えて』という昨日の記事をお読みいただいた方の中には、「インフルエンザなら、タミフルをもらって治療すべきではないのか。大丈夫なのか」と、疑問を感じた人もいるかもしれない。結論から言うと、軽症であれば大丈夫だ。(堀米香奈子)
確かに、タミフルやリレンザといった抗インフルエンザウイルス薬の投与は、厚労省のホームページでも、新型インフルエンザの「治療法」として紹介されている。こうした薬は、受診しなければもらえない。軽いとはいえ症状が出ているのに、特効薬とされるタミフルやリレンザを使わなくても平気なのか、正直なところ不安だという方もいることだろう。
これについて、昨日に続き森澤雄司・自治医大病院感染制御部部長に話を聞くと、「アメリカやカナダでも新型インフルエンザの患者数は増えているものの、致死的ではないmild diseaseと考えるようになってきているようです。受診せず自宅療養で治っている人も多いとも聞きます」とのこと。実際、今回は慢性疾患等を抱えていない10代後半~成人の患者に対しては、タミフルやリレンザを使用しない形での治療も行われ、すでに退院した人も出てきた。
こうした対応には理由がある。
タミフルやリレンザは、強毒性のインフルエンザに襲われた際に頼みの綱となる可能性がある。一方でインフルエンザウイルスは遺伝子の変異が激しいことも知られている。このため、特定の治療薬が頻繁に使われていると、変異を繰り返すどこかの時点で、その薬に対して耐性を持ったウイルスが出現する可能性も高い。その耐性ウイルスが強毒性だとすれば、必要な時に効く薬がなく、感染が急速に広がってしまう、といった事態にもなりかねない。
「そのため当院でも、今回あらためて『基礎疾患のない軽症インフルエンザにタミフル・リレンザは不要』という通知が出されました。今年は季節性インフルエンザの流行も長引いていましたが、いずれにしても、タミフル・リレンザの濫用は避けるという原則の徹底です。まして、たいした根拠もなく自己判断で『予防に』と、むやみに服用するのは問題です」(森澤部長)
インターネットを通じ、タミフルを海外から個人輸入している人も少なくないようだ。だが、こうした事情をわきまえず思いつきで服用しているとしたら、危険極まりない。タミフルやリレンザを使う場合は必ず、保健所の発熱相談センターや医師の指示に従うこと。そして繰り返しになるが、「インフルエンザかな、ただの風邪かな」と迷う程度に軽症で持病のない方には、まず自宅療養を考えていただくということになる。