梅村聡の目㉕ 市民と対話の場をつくり 政治文化の変革に挑戦
これまで、国民が政治により関心を持つ文化を育むため、「少人数でも、話を聴きたいと呼んだら政治家は来ます。ぜひ気軽にやってみてください」とお伝えしてきました。本当? と思われた方も多いはず。私は実際に、色々な立場の方からお誘いを受け、年明けから3月までに4回、市民集会に参加しています。参考にしていただければ幸いです。
今回は、大阪府高槻市内の公民館で2月2日(土)17時から、開業医の白藤達雄さんが主催して開いてくださった会のことを、ご紹介します。会場は駅から徒歩約15分、土曜日夕方の冷え込んでくる時間帯でしたが、参加を広く呼びかけていただいたようで、市民の方約50人が集まってくださいました。
質疑応答を重視
十分に意見交換できるよう、全体90分のうち半分を私が話し、残りを質疑応答という構成にしました。
私は参加者の皆さんと同じ椅子に座り、向き合います。白藤さんは参加者に「普段は身近に感じにくい国会議員だが、今日は滅多にない機会なので、ぜひどんなことでも質問してもらいたい」と話しました。
出てきた質問は、素朴でありながら、本質を突いたものばかりでした。国会議員は、議員同士や官僚、業界団体、マスコミなどと様々な話をしますが、木を見て森を見ずになって本質からずれてしまっているのも多いことを改めて実感しました。
例えば介護施設で働く方が「入居者の年金から入居にかかる費用を引いて、残りのお金で家族が生活している。おかしいのではないか」と発言されました。厚生労働省の年金局と、介護施設を管轄する老健局の縦割りによって起こる社会保障の隙間を指摘したものでした。
議員報酬の適正金額も尋ねられました。適正な金額というものは分かりませんが、報酬の中から事務所運営費を捻出しなければならず、現在の報酬体系では厳しいことも事実です。資金力のない優秀な人も入ってこられるようにする必要はあると答えました。
「橋下徹大阪市長が市長のまま参院選に出馬するとしたらどう思うか」との問いもあり、「場合によっては首長と参議院議員との兼職を認めてもよいと思う。参議院の改革にもつながる。」と答えました。ただしその前提として、参議院は党議拘束や会派を無くし、議員一人ひとりの判断で賛否を表明することを目指す等、参議院と衆議院の職務内容に差を持たせることが必要だと言いました。
無関心を招く罠
会場からは、私のような政治家がもっと増えないのかという質問もありました。それに対しては白藤さんが、「(政治家と一般市民の橋渡しをする)私のような人が増えることが大切だと思う」と答えました。
「若者の投票率が上がるように、何か考えてほしい」という意見にも白藤さんは、「考えてほしいじゃなくて、考えましょうではないでしょうか? この場がそれをやっていく所だと思います」と答えました。
その通りだと思います。自分の知らない所で決まった候補者の中から選挙の時だけ選ばされるのではなく、普段の意見交流を通じて自分たちに必要な候補者を育ててほしいし、それが民主主義社会に生きる市民の義務でもあると思います。
今の日本では、一筋縄でいかないことも重々承知しています。政治について考える場面を増やすため集会を開こうとしても、日本には「政治と宗教お断り」という文化が蔓延しています。今回は公民館を借りられましたが、政治家が話すというだけで断る施設もあります。ここに日本の民主主義の貧弱さが表れています。戦後の学生運動やカルト的宗教団体などの「トラウマ」が影響しているのでしょう。しかし、政治に関してはこういった風潮が結局自分たちの首を絞めてしまっているという事実に気づかねばなりません。政治に関心を持ち、投票率を上げようと言うならば、気軽に政治家と触れ合い、意見や情報を交換できる場があるべきです。
政治を取り巻く一般社会の状況については、政治家自身も誤解しています。例えば医師会や商工会議所、労組、農協など、業界団体を味方につければ票を得られると思い込んでいます。しかしそれは昔の話です。
私は日本維新の会に投票した労組員や医師会会員を知っています。組織の末端にいる人は、自分たちが団体に属していることは分かっていますが、同時に自分たちが直接政策に関われないとも感じています。だから、これからの変革を期待し、政治に関わりたいと思って、日本維新の会に投票したわけです。なぜ日本維新の会があれだけ得票したのか、政治家はもっと謙虚に反省すべきでしょう。これからは、「団体」ではなく「個人」とどう交流し、理解してもらうかということを考えていかねばならないのです。
一方これは有権者についても言える話で、「政党」に頼って考えるのをやめた方がいい時期に来ています。どの党にも、優秀な議員、そうでない議員、両方います。個性や政策も様々です。政党だけ見ていたら、それは分かりません。政党しか見ないのは、素材や機能性も考えずに、有名ブランドのバッグを持って安心している様子と似ています。ブランドに頼るのは、個々を見抜く力に確信がないからで、思考停止を起こした状態とも言えるでしょう。ぜひ個々の候補者を見抜く力を身につけてください。
今は、人々の働き方やライフスタイル、立場も多様化しています。様々な人が包摂される社会になっていかなければならない時代に、団体や肩書だけを見ていては時代遅れです。
有権者には、候補者個々を知る権利があります。
集会終了後、2名の方が自分もこういう会をやりたいと申し出てくださり、とても嬉しく思いました。こういう草の根活動が少しずつ広がることで、必ずや国民の政治に対する関心は高まっていきます。私はそれに挑戦し続けたいと思っています。