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情報はすべてロハス・メディカル本誌発行時点のものを掲載しております。特に監修者の肩書などは、変わっている可能性があります。

小児科の「現在」

「小児科」は、いったいどこを目指すのか?

 ここまでの話を他人事と思って読んでいたなら、ちょっと困ります。実は、どのように医療を変えるかというのは、受益者であり負担者でもある私たち国民が、どの程度の変更なら折り合いをつけられるかを考えないと決まらない問題だからです。
 都市部の場合、小児科医が「足りない」という事態そのものが深刻ではありません。だから、何も困っていない、現状維持で構わないというのも立派な意見です。ただし「国の宝」である子どもたちの健康を考えた時、地域格差が激しい現状の維持が本当に正しいのかは、是非とも熟慮していただきたいところです。
 そして、現状を「改善」する方策は一つではありません。小児科学会の提言も含めて、いくつかのアプローチ方法があります。そして、万人にとって嬉しいアプローチというものはありません。
 例えば、小児科学会の提言する病院小児科の集約ですが、平均勤務人数が2.3人しかない現状で、定員増のような費用負担抜きに医師の健康を守ろうとしたら、かなり必然的な結論になります。今の人数で当直を続けた場合、考えるだに恐ろしい事態が起きる可能性があるからです。
 しかし、これは受診者側からみるとありがたい話ばかりではないはずです。救急実施施設の体制が充実する反面、近所に施設がなくなる人も出てくるからです。
 例えばこういう場合に、テレビ電話などで保護者の相談に乗るシステムがあると、親御さんの不安も若干は解消されるかもしれません。
 現在の小児救急実施施設すべてに増員を行えば受診者は困りませんが、そのためには小児科に手厚い診療報酬体系が必要になり、健康保険料が値上げされるとか、他の診療報酬が削られるとかいった事態も考えられます。もちろん、それを絶対に避けるべきというつもりはありません。国民的議論を経て、負担増を甘受するという選択肢だってあるからです。
 距離は遠くなっても所要時間が変わらなければ良いではないかということで、施設の集約と交通手段の拡充をセットにする、こういうアプローチもあります。最初に駆け込んだ医療機関から基幹施設へヘリで運ぶのは一例です。
 また、医師が足りないなら、医師の代わりを果たせる人材を育成すればよいではないか、こういうアプローチもあります。この方向で出てきたのは、日本看護協会が育成を始めた「小児救急認定看護師」であり、厚生労働省が補助金を出して子育てなどで離職した医師や看護師をパートタイマーで呼び戻す制度です。
 方法は一つではありません。どれを選ぶかは、私たち自身です。

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