「わかっちゃいるけど、やめられない」? 依存症
少し具体的に見てみることにしましょう。
もっとも身近な例であるアルコール依存症の人は、全国に推計で80万人以上いるといいます。
典型的な特徴として、飲み始めると自分の意思ではやめられず、酩酊するまで飲んでしまう「強迫的飲酒」や、常にアルコールへの強い渇望感があり飲み続ける「連続飲酒」、そして耐性の増大や退薬症状などが挙げられます。飲酒でトラブルを多く起こして激しい後悔するも、忘れようとまた飲酒する、こんなパターンも一般的。
誰しも当初は毎日飲むわけではなかったのが、何らかの原因で毎日飲む習慣性飲酒に移行して、いつの間にか依存症に陥ってしまうといいます。傍目には本人が自分の判断で好んで飲酒しているように見え、患者自身も好きで飲酒していると錯誤している場合が多いとか。そのため患者にアルコール依存症だと告げると、「自分は違う」などと、激しく否認します。しかし、依存が重度になると禁断症状を避ける目的で飲酒を繰り返すので、もはや自分の意思だけでお酒を断つことは非常に困難なのです。
このような推移と悪循環は、アルコールに限らず、その他の薬物依存症でも同様です(表)。しかも、最近の傾向としては、低年齢化が深刻です。中高生の若者の薬物依存の入り口はシンナーといわれます。仲間に誘われて「シンナーくらいだったら」と、興味本位でやってしまうようです。けれども、いずれ覚せい剤や大麻などにまで手を伸ばし、深みにはまってしまうことが珍しくありません(もちろんいずれも犯罪行為です!)。こんなことから薬物依存症が、10代後半から30代の若者の間で急速に増えているのです。
なかでも近年、社会問題となっているのが、「違法ドラッグ(いわゆる脱法ドラッグ)」です。法律的な定義はありませんが、中枢神経に作用して多幸感や快感等を高めると称して販売されている物質。平成19年4月には、薬事法が改正され、中枢経系興奮等の作用があり保健衛生上の危害が発生する恐れのある31物質を厚生労働省が「指定薬物」に指定し、取り締まりに乗り出しました。しかし、巧みに法規制を逃れているものも存在しています。
このように無意識だったり出来心から始まったりするのが依存症。陥る危険性は、意外と自分や家族のすぐ隣にあるのかもしれません。
ほとんどが依存症以前に犯罪。 ほとんどの依存性薬物は、その所持・使用自体が、覚せい剤取締法、麻薬及び向精神薬取締法、大麻取締法、及び薬事法によって厳しく規制されていて、依存による以前に犯罪です。特に日本の場合、覚せい剤取締法違反者が多く、受刑者の4分の1から3分の1を占めます(女子では約半数)。覚せい剤は、幻覚や妄想を引き起こすことが多く、通り魔の引き金になっている場合も多いとか。暴力団の資金源でもあり、まさに諸悪の根源といえます。また、若者の乱用が問題となっている幻覚剤は、カルト集団で洗脳に使われているという話もあるくらいです。