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地域医療が危ないって どういうこと?
「地域医療」という言葉、そしてそれが危ないんだという声を、よく耳にします。
でも正直、何がどうなっているのか、よく分からないですよね。
基礎的なことから確認してみましょう。
監修/平井愛山 東金病院院長
中村利仁 北海道大学大学院助教
医師がいないと病院潰れる
過去何度か、現在の日本は医療者が相当足りない状態にあって、医療を受けたくてもなかなか受けられない崩壊現象が始まってしまったことを特集してきました(08年4月号など参照)。
この、「受けたくてもなかなか受けられない」を、もう少し正確に表現すると、地域や診療科によっては医療を受けたいと思った時に生活圏内で受けられない、もしくは待たされるというような状態が増えたということになります。
きちんと定義なしに「地域医療」と言うと、人によって思い浮かべるイメージが異なりがちなので、今回の特集では、この「生活圏の中で必要な時に受けられる一定水準以上の医療サービス」を地域医療と定義します。そして、それが時と場合によって供給過少になっていること、しかも過疎地域だけでなく東京23区に代表される大都市にも共通する課題であることを出発点にして先へ進みます。
さて、なぜそういうことになったかを考える前に、基礎知識を確認します。医療が提供されるには、医療機関が安定的に存在できる必要があります。そのため、医療機関の収入が支出を下回らないことは絶対条件です。
医療機関の場合、日常的な収入源の大部分は、医療行為に対する保険からの診療報酬。実はここに、医師不足が地域医療の危機に直結する、その原因の一つが隠れています。
医療行為というのは、医師がいないとやってはいけないので、いくら豪華な設備があろうが他に優秀なスタッフがいようが、医師が在籍しなければ医療収入も生まれません。
常勤勤務医1人が年間に稼ぎだす診療報酬は平均約1億円と言われています。誤解したらいけないのは、医師だけの働きで1億円受け取れるということではなく、他のスタッフや設備の稼働によるチーム医療に対して報酬を受け取れるようになるということ。スタッフの人件費や医薬品の代金など支出を全部賄わなければならないので、医師1人あたり1億円の収入と言っても決して多いとは言えず、むしろ病院向け診療報酬は低すぎて、多くの病院で利益が出ていないか赤字になっています。
もう一つ基礎知識。医療機関には、官営のものと民営のものがあります。官営のものは一般に公立と呼ばれますが、民間機関も公益には貢献しているので、ここでは「公」の字を使わず官営で統一します。
なぜ2種類混在しているかというと、医療機関の整備をまず民間に任せてみて、足りない分は自治体が身銭を切ってでもやるという考え方で進んできたからです。採算に合うなら自然と民営で賄われる理屈ですから、不採算な部分は官営病院がほとんど担うという構図になります。ただし、もっぱら首長の権力誇示の材料としてつくられた官営病院があるとか、いったん官営病院ができてしまうと、病床規制(08年5月号参照)があるため、民間が望んでも拡大や参入をできないという問題も現実に存在します。