痔 独りで我慢は損ばかり
さて、痔になってしまったらどうすればよいのでしょう。
前提として、痔は長年の生活習慣によって徐々に形成されてきた生活習慣病の側面が強いため、一番大きく効くのは生活習慣の改善です。ただここでは理解のしやすさを考えて、生活改善の説明の前に、医療機関でどんな治療が提供されるかを説明してしまいます。
まずは最もシンプルな外痔核。痛みが軽ければ軟膏などを塗って自然に治るのを待ちます。耐えきれないほど痛みが強い場合には、局所麻酔をかけて手術で痔核を切除します。あまり出っ張っていない場合には、切開して血栓を取り除きます。
軽い場合には、座薬や注入軟膏で苦痛だけ軽減して自然治癒を待ちます。I度、II度の内痔核には、硬化剤を注入して瘢痕化させてボロっと落とさせたり(注入硬化療法)、輪ゴムで縛って血流を断ち除去する治療法(輪ゴム結紮法)があります。このほか、レーザーや赤外線などで内痔核を破壊する治療法もあります。
Ⅲ度、Ⅳ度の内痔核を治すためには、手術が必要です。痔核に血液を供給している動脈を結紮する方法や自動吻合器(ふんごうき)で痔核の根元を縫い合わせてやはり血流を断ってしまう方法などがあります。メスで強制的に切り取る以前の手術だと術後に激しい痛みが続きましたが、血流を断つ方法の場合、それほど痛みはありません。さらに、最近新しい注入硬化療法が開発され、手術と同じ程度の効果が期待されています。
裂肛に対しては、便を軟らかくする薬や潤滑性座薬を使って、スルっと排便できるようにして、傷が自然治癒するのを待ちます。排便後10〜15分温座浴をすると不快感がなくなり、血行も良くなり治りやすくなります。
括約筋の痙攣まで進んでしまっている場合は自然治癒が望めないので、その痙攣を抑える薬がいろいろと試されれています。薬で痙攣が止まらなければ手術が必要になります。内括約筋を伸展(拡張)させたり、括約筋の一部を切開します。
痔ろう系の場合、完全に症状を消そうと思ったら、手術で穴を含む部分を切除してしまうことしかありません。ただし手術中に括約筋の一部を切ってしまうことがあり、切りすぎると、排便のコントロールが難しくなります。
また傷の治りが遅いような基礎疾患を持っている場合は手術できないので、痛みを軽くするような対症療法になります。
いかがでしょうか。これだけ様々な可能性があって、しかも自分の状態がどれなのか分からないのですから、独りで耐えるのが無意味なこと、お分かりいただけたかと思います。まずは受診して、状態をハッキリさせましょう。そして次項の生活改善へと進みましょう。