痔 独りで我慢は損ばかり
最後に、痔を予防したり、あるいは状態を改善させたりする生活習慣を考えて行きましょう。
まず最も直接的な予防改善法は便秘や下痢をしないこと。便秘すると腸内が不潔になるばかりか、排便時に強くいきむことになって、肛門周辺の静脈内の圧力を高めます。便が硬すぎれば腸が裂けます。逆に軟らかすぎの下痢も排便時に勢いがつくために粘膜を傷めますし、便が粘膜内の穴に溜まりやすく細菌感染の原因になります。
便秘の治療・予防としては、食物繊維を多く摂取したり、適度の運動をすることが有効です。薬を使うなら便を軟らかくするタイプの便秘薬がよいでしょう。必要に応じて、腸を強制的に活動させるタイプの薬(下剤)も使えます。
ちなみに腸は「第二の脳」と呼ばれるほど神経が集まっているので、その活動はストレスの影響を強く受けます。さらにストレスや疲労は、血行を悪くしてうっ血を起こしやすくしたり、免疫を低下させたりと痔の悪化に働きます。ストレスをためこまないことが大切です。
かといって「ストレス解消」めざして暴飲暴食するのは、腸に負担をかけるので本末転倒です。アルコールの摂り過ぎも肛門周辺のうっ血や下痢を呼びます。コショウやトウガラシなどの香辛料は、消化されずにそのまま便にまじって排出され腸粘膜を刺激します。摂り過ぎて翌日にお尻が悲鳴をあげた経験はありませんか。
ストレス解消の王道は、メリハリの効いた規則正しい生活と十分な休養・睡眠。この辺は他の疾病予防にも通じる毎度おなじみの事柄ですね。
ここで注意が必要なのは、睡眠が必要だからといって、ギリギリまで眠って朝ごはんを食べないのもダメということ。眠っている間は腸の動きも止まっています。朝ご飯を食べないと、腸がきちんと起動せず、規則正しい朝の排便も望めません。
なぜ朝の排便が大切かというと、家を出てしまってからは、便意が訪れた時に必ずトイレに行けるとは限らないからです。我慢していると便意が消えて便秘になります。ただし全部出そうとトイレにこもるのも便座に座った姿勢が、ことのほか肛門に負担をかけています。さっと座って、さっと出るを心がけましょう。
同様に日中も座りっぱなしはよくありません。ややこしいのは立ちっぱなしもよくないということ。最初にも述べたように「文明的な人間」をやっていると、とにかく肛門にはよくないようです。せめて同じ姿勢をずっと続けないよう、立っているにしても座っているにしても、こまめに休憩して体操したり歩き回ったりするようにしましょう。
体の冷え(09年2月号参照)は、血行を悪化させるもと。肛門のうっ血を防ぐには、特に腰やおしりまわりを温めることが大切です。暖かい下着やカイロなどを利用して、冷えから体を守りましょう。また、湯船にゆったりとつかって体を温めるのも効果的。お尻の清潔にも役立ち、一石二鳥です。