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あるのに使えない3

アバスチン、アブラキサン*乳がんに使えない抗がん剤

生存者の多い乳がん 進行すると話は別

このコーナーでは、様々な原因で医薬品や医療機器のラグ・ギャップに悩む患者の方々に、どういうことで苦しんでいるのか、直接書いていただきます。

 乳がんになる人は、増えているが、治療法が進歩して、あまり怖くないがんになった。それでも、毎年、1万人以上も亡くなっている。10月は乳がん月間、啓発運動にどこの患者会、メディアも忙しい。ピンクリボン作戦、ライトアップ、講演会のあとの派手なパーティー。
 でも再発して、具合が悪い人は、いいことをしてもらえない。
 私は、23年前34歳で乳がんになった時は、自分が進行がんでも、平気、平気、こんなに元気だもの、それに、シングルマザーで病気のことなど考えていられない。10年前に再発した時は、平気、平気、乳がんにはたくさん抗がん剤があるから抑えられるに決まっている。それより生活の為に働かなくては。放射線療法だって、抗がん剤だって高いから......と喝を入れて働いた。
 誰もがんが再発したって、助けをくれない。新しい政権になって、小さい子供がいる家庭は、お金がもらえるって本当? 本当は教育が一番大変なのに。それにどうしたことかしら、抗がん剤をして、具合が悪い私たちは電車で立っていなくてはならなくて、「お母さん、疲れた! 座りたい」という子は座る権利がある。何か変。
 再発仲間と、このがんは自分の体内から生じたものだから、共存しながら闘っていこうと士気を高めあった。私は、10年間、抗がん剤を取っかえひっかえして耐性になっては変えて、やりっ放しの状態で、闘ってきた。しかし、どんどん悪くなってきて、今は全身転移(肝・肺・腹膜・骨)の状態。つらい。
 働くことは、○○にはご面倒をかけるどころではなく、根性で、どんどん働いて、税金をたくさん納め、でもある日、自分の抗がん剤が入っている武器庫を開けてみたら、何とゼロだった。そんなばかな! 丸腰で、がんと闘えというのですか! いったい誰が? どこが悪いのか? 企業や医療者、製薬会社が悪いのではなく、そうだ、きっと○○だろう。
 何とかしなくては、これにはドラッグ・ラグ問題がかかわっている。まず日本の抗がん剤の種類は、北朝鮮並みと知ってほしい。そして絶対に人事と思って欲しくない。自分はがんにならない!? 自分はがんになっても再発しない?
 薬の承認が少しは早くなってきた。しかし、ドラッグ・ラグを氷山としたら、氷山の一角を削っているようなものだ。間に合わないがん患者や、がん難民ができる。それに私たちのように末期癌患者でも、まだまだお国の為に充分働けるのに、「もう使える薬がありません。死が近づくまで、好きな事をして下さい」といわれてしまう。そういう人は50万人いるともいわれている。未承認薬が使えないために。実にもったいない話だ。日本一のがん病院で2〜3日前、私の友達に「マイトマイシン(超・古い抗がん剤)でもしましょうか?」と言った。
 恥ずかしい。抗がん剤後進国、日本。

(松戸市立病院医師 小倉恒子)

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