認知症を知る3 レビー小体型
医療による早期介入が望ましい病気である一方、初期段階では見極めが難しく、アルツハイマー型認知症やパーキンソン病、うつ病など様々に診断されることがあります。
抗精神病薬に対する反応が大きいという特徴があるため他の病気と診断を間違え、その治療を受けると、薬が効き過ぎて、しばしば厄介なことになります。
レビー小体型認知症の複雑な症状の出方は、脳内の複数の神経伝達物質に同時に不足が起き、問題が組み合わさるためと考えられます。
まず、アルツハイマー型認知症でも減少するアセチルコリンは、より大幅に欠乏します。また、パーキンソン病で低下が問題になるドーパミンも、レビー小体が共通して存在することから分かるように、やはり欠乏します。ノルアドレナリンやセロトニンも不足します。
ただ、現象は分かっても、どうしてそうなるのかの原因がまだ分かっていないため、治療は対症療法が基本になります。
初期の精神症状や幻視には、アルツハイマー型認知症の治療にも用いられるドネペジルなどのコリンエステラーゼ阻害薬、あるいは抑肝散という漢方薬が効果的です。
認知機能の低下がハッキリしてからは、幻覚などは減る一方自発性が失われ、アルツハイマー型認知症と症状が重なってきます。またパーキンソン病の症状も目立ってきます。そこでアセチルコリン系の治療と、ドーパミン系の治療とを並行して行うことになります。
前者に対しては、コリンエステラーゼ阻害薬が、しばしば効果を現します。幻覚や妄想など精神症状の改善も見込めます。
後者に対しては、パーキンソン病の治療に用いられるレボドパやドーパミンアゴニストが有効です。
付随して出てくる精神症状に対しては、パーキンソン症状を悪化させにくい非定型抗精神病薬が選ばれ、リスペリドン、フマル酸クエチアピンなどが、いずれも十分な説明と同意のもと副作用の出現に注意しながら少量から投与されます。
レビー小体病? レビー小体の主な構成成分はα-シヌクレインというタンパクです。レビー小体の出現という点でパーキンソン病とレビー小体型認知症は本質的に同じ病気で、その出現場所が違うだけと考え、レビー小体病(Lewy body disease)と呼ぶのが主流になってきました。また、α-シヌクレインが溜まるという特徴のある他の多系統萎縮症も含めて、「シヌクレイノパチー」と呼ぶこともあります。▽α-シヌクレインの研究が進むことで、様々な疾病の治療法のヒントが見えるかもしれません。
もっと詳しく知りたい方は、監修の小阪憲司医師の著書をご覧ください。