喫煙 口も傷める ~年間シリーズ 口から人生を豊かに④
血流が減って抵抗力弱る
第2の経路は、やはり煙に含まれるニコチンによって起きます。ニコチンには、血管を収縮させる作用があるため、末梢の血流が減り、様々な影響を及ぼします。
そして困ったことに、こちらの経路の悪影響は、受動喫煙でも起きてしまいます。
唾液が減る
末梢の血流が減ることの影響のうち、口に直接関係するのは唾液が減ることです。唾液は、血液中の液体成分(細胞以外のもの)から作られるためです。
唾液は、歯が溶けやすくなった酸性の口内環境を中和し、食べカスを洗い流し、歯の再石灰化を促すという重大な役割を担っています。これらの働きが不充分になりやすいわけです。
なお、唾液が減ることによって、口臭も発生しやすくなります。また高齢者には命取りになりかねない誤嚥性肺炎も起こしやすくなります。
加えて、食べ物の味は、唾液に溶け込んでいる方が舌の受容体に捕捉されやすいという関係にあるため、唾液が減れば味を感じづらくなり、濃い味付けでないと満足できなくなりがちです。生活習慣病との関連で、見逃せないところです。
発見が遅れる
口内の細菌などと闘ってくれる免疫細胞は、血流に乗って全身を巡っています。血管が収縮して血流が減れば、それだけ免疫細胞の数も少なくなり、闘いが長引くことになります。免疫と外敵が闘っている局地では、江戸時代の火消しが家を壊しながら消火するのに似たことが行われているので、闘いが長引いた分だけ組織は傷みます。
このようにして歯周病が進行していくわけですが、その一方で、血流が減っていると、発見は遅れがちになります。
これは、過去の歯磨き剤のCMなどの影響で、歯茎から血が出ることを歯周病の初期サインとして認識している人が多いためです。
通常の血流量なら歯を磨いた時に出血するほど歯茎が傷んでいても、喫煙で血流量が減っている人は、歯茎が貧血状態になっているため、出血は少ないのが特徴です。結果に「まだ大丈夫」と思っているうちに進行してしまうこととなります。血が出なくとも、歯茎がドス黒くなっていたら、かなりマズイです。